結婚は「してもしなくてもいい」という価値観に変わったいま、その魅力とは何なのか (※写真はイメージ)
結婚は「してもしなくてもいい」という価値観に変わったいま、その魅力とは何なのか (※写真はイメージ)
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「東京2020オリンピック・パラリンピック、あなたは誰と観ますか?」――。平昌オリンピック開幕の裏で、東京都が2月に発表した“結婚促進”動画が「余計なお世話」「こじつけ」と批判を浴びている。2017年には都は初めて婚活応援イベント「TOKYO 縁結日」を主催、今年も電車内での振る舞いの好みでマッチングするイベント「赤い糸電車」など、官製婚活がじわりと広がっている。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦やカップルの間に起きがちな問題を紐解く本連載。今回は「結婚のモチベーション」について解説する。

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 東京都によると、この動画は「(結婚を)後押しするため」のものだそうです。未婚率が増えているものの、未婚者の中には結婚したい人たちや、潜在的な結婚希望者が相当数います。結婚したくない人を結婚させるのは難しく、それで幸福度が上がるとは思えませんが、結婚したくてもできない人が結婚できれば社会全体の幸福度は上がるでしょう。

 もちろん、結婚という個人的な選択に政治がどこまで関わるべきか、関わってよいのか、という議論はあると思いますが、それは横に置くとします。その上で、残念なことに、今回の動画は、都民の幸福度を上げるという目的ではないようです。違和感の一つは、結婚して子どもを作ってくれないと(為政者ないしは国民が)困るから結婚するように仕向ける、という話の構図が透けて見えるてしまっていることです。それでは何だか、上野動物園のパンダの気分になってしまいます。都が飼育員で、都民がつがいのパンダ。ただ、決定的に違うのはパンダ夫妻と子どものシャンシャンには万全の育児サポートがついていますが、都民は自己責任で子育てをしなければならないことです。

 例えば、ハンバーガー店の店頭で、

「ポテトや飲み物も売れないと、店長に叱られてしまうんです」

という店員はいません。しかし、結婚してくれないと(子どもを作ってくれないと)困る、という話はこういう構造です。ハンバーガーショップは代わりに、「ハッピーセット」などという名前を付けて、単品で買うより幸せな気分になれるようなアピールをしています。つまり、これを買えばお客様は幸せになれますよと言っているわけです(結果的に店も幸せになりますが)。

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背中を押せば結婚するのか