9月に入り、学校では新学期が始まった。秋晴れが焦がれるこの頃、夏の思い出話に花を咲かせることもあるだろう。鉄道音楽家・向谷実さんは夏休みにカナダの大陸横断鉄道「カナディアン号」に乗ってきたという。その乗り心地はなかなか“刺激的”だったようだ。思い出を語ってもらった。
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8月が終わり、なぜかようやく晴れ間が見えるようになりました。新学期が始まっている人もいるでしょうが、夏が終わったという感じがあまりしないこの頃です。
先月、6日間くらいの休みを使って、カナダに旅行してきました。お目当てはカナダの大陸を横断する旅客列車「カナディアン号」です。「カナディアン号」はカナダ西海岸のバンクーバーから、五大湖に面するトロントまでの4466キロメートルを約3日半かけて走ります。今回はこのうちの、バンクーバー~エドモントン間を乗ってきました。一生に一度は乗ってみたい思いから乗車したのですが、日本の鉄道の常識では味わえない様々な体験をすることができました。
行きはまず飛行機でバンクーバーに向かいました。そこで「スタンレーパーク」という大きな公園を自転車で散策したり、グランビルアイランドにある地ビールの工場でテイスティングをしたりしました。
そこから、ジャスパーという、ロッキー山脈を越えた麓にある街に向かうために、「カナディアン号」に乗って移動します。
バンクーバーの発車は20時半だったので、その1時間前の19時半ぐらいに向かったのですが、発車する前から1時間の遅れが決定していました。現地に着いてから実感したのですが、「カナディアン号」が定時で走ることはまずないそうです。いきなりの“洗礼”を浴びせられる形になりました。
客車そのものはホームに着いているので、乗ったまま中で待てるのかと思いきや、なぜか乗ることすらできません。それどころか、なぜ発車できないのかのアナウンスすらありません。結局「カナディアン号」が走り出したのは定刻の2時間40分後。遅れの理由の説明はありません。周りにいる人に聞いても、誰一人「わからない」という答えが返ってきます。客車の老朽化が激しいので、よくある話として、客車のどこかが壊れていたとか、水が出ないとか、トイレがダメだとか、料理の具材が集まらなかったとか、そういう理由じゃないのかなと思っています。こういうのは海外ではよくある話なんですね。