うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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皆さん、ピグマリオン効果ってご存じですか? 私はこの効果を親が子どもにあげられる最強の武器だと思っています。たとえるなら、ドラゴンクエストで勇者の証しである天空の剣を授け、ワンピースではルフィを仲間にするようなものです。果たしてどんなものか? 簡単に説明させていただきましょう。
昔々、教育心理学者のロバート・ローゼンタールという人がいました。彼はある学校で「君たちが将来どれだけ伸びるかを試すテストをしますよ~」という大嘘をつき、適当に作ったテストを生徒たちにやらせました。将来性を試すなどという重圧を背負いながら必死で問題を解いた生徒たちが可哀想になってきますが、そこはひとまずおいておきます。ローゼンタールはテストの結果を見た後、担任に言いました。「うん、こりゃAくんとBくんとCくんが伸びるね」。実はこれも口から出まかせでした。よくそんな堂々と嘘をつけるもので、人としてどうかと思いますが、数カ月後に不思議なことが起こりました。なんと、実際にAくんとBくんとCくんの成績が、他の生徒たちと比較して、グンと伸びていたのです。
「すごい! いったいどういう理由で、この子たちが伸びると見抜いたのですか?」、担任が興味津々に尋ねました。きっと、今後の教育に取り入れて大勢の生徒たちの能力を伸ばしてあげたいとでも考えたのでしょう。そこでローゼンタールが答えました。「あ、ごめんなさい。あれはまったくの勘です」
ここで問題視すべきはローゼンタールの人格ではなく、なぜ適当に選ばれた生徒の成績が本当に伸びたのか、ということです。
タネを明かすと、担任はテストまで実施され「この3人が伸びる」とキッパリ断言されたことにより、この3人に対する接し方が他の生徒と違っていたのです。そしてそれは、普段の態度や言動に顕著に表れていただろうと予想がつきます。