■3年後、慶子さんのモノローグ
私は、しぎはらさんのスタイリングがきっかけで、まさに人生が180度転換しました。3年前のあの一日がなかったら今の私はどうなっていただろうと考えると、ちょっとゾッとします(笑)。
以降、いろんな場面であのカーディガンとワンピースを着ているのですが、特に赤いカーディガンを着ると、
「今日、なにかいつもと違うね」
って言われることが多いんです。何が? って聞いても相手は大抵答えられないんですけど、たぶん私の気持ちの入り具合や、決意みたいなものが投影されているのだと思います。この赤いカーディガンを着ていると、なんだか守られているような感じがして、何でもできる気がするんです。
実は、同性から“なんでいきなりこんな女の子っぽい服着るようになったの?”って言われるんじゃないかと内心ビクビクしてたんです。実際に一部にはそういう声もあったんですけど、それを上回るみんなの高評価があったから気にならなかった。しぎはらさんにも、
「これが私よ、それが何か?」
っていうくらいの勢いで着ちゃいなさい、って言われたんですが、赤いカーディガンを着ると自分を律することができるんです。それは頑固とか強情とかとは違う、決意みたいなもの。そんな運命の服に出会えたことを、本当に感謝しています。
彼と結婚して、家庭と仕事の両立はたいへんですけど、二人で過ごす生活は楽しいです。そろそろ30代半ばに差し掛かってくるので、目下興味があることは仕事上での成果。次はしぎはらさんに、ビジネスに効く服をスタイリングしていただきたいなと思っています。
■しぎはらひろ子のプラチナエール
私は慶子さんの人生に起きた変化を、心から嬉しく思いました。もちろん彼女の素直な性格と実践力があってのことですが、こんなふうに劇的に人生を切り開いた慶子さんのケースは、きっと多くの女性に勇気と希望を与えるものだと思います。
ここで一つ、大切なお話をしたいと思います。慶子さんに限らず、女性のおしゃれへの意識は大抵、母親の影響を大きく受けています。たいていは母親が買ってくれた服を着て大きくなるので、それは当然のことと言えば当然のこと。
お母様が男社会の中でバリバリ働く姿を見て育ち、実力さえあれば女性でも活躍できると期待もされていたし、自分もそうありたいと思って頑張ってきた慶子さん。そんな、なんでもできる優秀な女性が唯一知らなかったのは、女性らしさの使いみちでした。
今回はかわいらしい服を着ることでその可能性を引き出し、「仕事命」というだけではない、もう一人のキュートで親しみやすい自分がいることを知り、その喜びを実感してほしかったのです。
そして、装いという戦略が、あらゆる場面でいかに自分の人生の味方になってくれるか、ということも。
果たして慶子さんは、見事にご自分の運命を変えることができたのです。
読者の皆さんのなかにも、多感な思春期におしゃれを許されずに育ったという方がいらっしゃるのではないでしょうか。それは、お母様の教育方針やそれぞれの家庭の事情など、様々な理由があったと思います。
でも大人になったあなたには、自分の装いは自分で選ぶ自由があるのです。どうか、あなたのなかにある「女性らしくありたい」「かわいくありたい」という気持ちにいつまでもフタをしないで、解放してあげてください。
自分のなりたい女性らしさをイメージして着ることは、恥ずかしいことでも邪道なことでもなく、その装いは、あなたの人生の味方になってくれる応援サポーター。あなたにパワーをくれ、成長させ、導いてくれるのです。
だからそんな運命の一着を見つけたら、クローゼットに大切に保管して、これ、という日にまとってください。もちろんそのときは“女優なりきりスイッチ”を忘れないで。
きっと思いもよらない未来が待っているはずです。
(編集/内山美加子 編集協力/河辺さや香)