「は?」
みたいな(笑)。結局そこで別れ話は回避されたんです。たぶん服のおかげです。普通の服だったらこんなふうに、“これを着ている自分なら、どんな状況に直面しても、自分を保っていられるから大丈夫”なんて思えなかった。服が守ってくれたり、自分のあり方を示してくれたりするなんて考えもしなかったから。
しぎはら:私もとっても嬉しいわ! ファッションの知恵と力をそんなふうに実感していただけて、仕事冥利に尽きるわ。お洋服も、お役に立てたって喜んでいるはずよ。
慶子さん:ええ。その半年後にプロポーズされたときも、この赤いカーディガンを着ていました。大事な日には、いつもこの服がそばにいたんです。
■案外、他人は“外見=中身”だと思っている
慶子さんの快進撃は、彼との結婚だけにとどまりませんでした。装いを変えたことで、社内での扱われ方も格段に変わったのだと話してくれました。
しぎはら:スタイリング直後に、会社にもそのセットを着ていったのよね。
慶子さん:はい、そうなんです。月曜日に会社に行ったら、
「どうしちゃったの、そのメイクと服?」
「おいおい、なんだか慶子さんが変わっちゃった!」
って上司もみんなびっくり。
「え――?」
同僚も二度見、みたいな(笑)。
お手洗いでは一度も話したことのない別部署の人が、
「今日、なんか、だいぶ違いますよね?」
って声かけてきたり。“なんか”以外、ほとんどの人が言葉にできないんだけど、まさに何かが違うことは察知するんです。
「全体の雰囲気が全く違う、きれいになったね」
はっきりそう言ってくれた人もいました。やっぱり嬉しかったですね。でも、私自身は何も変わっていないんです。痩せたわけでもないし、性格が変わったわけでもない。その時はまだ運命の彼に出会う前でしたから、恋もしていない。服を変えただけで、こんなにあっさり周りの態度が変わるなんて不思議だな~って思いました。
外見が変わると何か内面も変わったんだろうって、勝手にみんな思い始めるんですね。だから、“中身なんて見てない”とまでは言わないけど、案外“外見=中身だと思ってるんだな”って実感しました。
しぎはら:“外見じゃなくて中身で勝負するべし”って思っていた慶子さんには、目からウロコだったんじゃない?
慶子さん:ええ。今も別に内面を磨くことを意味がないとはもちろん思わないけど、内面を磨いても悲しいかな、人がわかるレベルで変わるっていうのは、かなりの時間と労力が必要。でも、先に外見が変わると、周りの対応が変わるので、それによって自分のあり方も変化して内面も変わってくるように思います。先になりたい自分の格好になってしまったほうが、自動的に変わっていきやすいんだなってわかりました。
“◯◯階行きエレベーター”みたいな、あとはこれに乗ればいいんだよって用意されている感じですね。
■生まれて初めて男性におごってもらった!
しぎはら:私がスタイリングしたお知り合いの方みたいに、敬われる経験はした?
慶子さん:敬われるのとはちょっと違うと思うんですけど、服を変えてからすぐに、生まれて初めて男の人に食事をおごってもらったんです。「え? こんなことで?」って思いましたね。それまでは男性に対し競争意識がどうしても勝っていたけれど、フォローもできるようになりました。もしかしたら、こういう姿勢が、恋愛にも生かされたのではないかと思っています。
しぎはら:周囲へのフォローも、正しい戦略よ。服が慶子さんをそう導いてくれたなんて、本当に嬉しいわ。
慶子さん:それに、仕事もしやすくなりました。会話中に冗談も言ってもらえるようになって。それまでは冗談が通じないタイプの人だと思われていたっていうことですけど(笑)。私も冗談で返したら、びっくりするくらい話が弾んで会話の雰囲気がよくなるんです。そのあたりから会社で私の意見を聞き入れてもらいやすくなった気がします。
しぎはら:恋も仕事も快進撃を遂げたわね! そうやって、これからも上手く服を味方につけて、素晴らしい人生を歩んでいってほしいわ。