1970年代の後半にUEFAチャンピオンズカップ(UEFAチャンピオンズリーグの前身大会)を席巻したリバプールは画期的な4-4-2システムを用いていた。プレーメーカーとか守備的ハーフなど、役割と個性がポジション名だった時代に終止符を打ち、区画されたゾーンで全員が攻守を同等に行うプレースタイルを広めた。誰かに汚れ仕事を押しつけるのではなく、全員がハードワークを請け負う。
「子供の時分はバスタブに浸かったことがなかった」と回想した炭鉱育ちのビル・シャンクリー監督による、皆で苦楽をともにする炭鉱のフットボールである。チャラいものなど一切受けつけない質実剛健のプレースタイルだ。
かつて4-4-2はイングランドの代名詞だった。レスターで岡崎慎司が高い評価を受けているのも、彼が無類のハードワーカーだからだ。ハードワークで岡崎に負けない原口も受け入れられるに違いない。
ただ、そこから先は本人次第だ。岡崎はハードワークで欠かせない存在だが、エースではない。FWとしてもっと多くの得点をあげてこそ別格の存在になれる。原口もすぐに重要な1ピースにはなるだろうが、構成員以上の存在になるにはアシストと得点の両面で数字を残す必要があるだろう。(文・西部謙司)