鉄道で旅をする時、すごくわくわくします。この昂揚感はどこからくるのでしょうか。どこにどうやって行こうか調べるとき、時刻表を広げます。そこで行ったことのない駅名を眺めながら、ここはきっとこんな街だろう、そこに行く間の車窓はこんな風景じゃないかと想像するわけです。このシナリオ的、ドラマ的な演出が鉄道旅行の醍醐味ではないでしょうか。
中学3年生の時、一人で北海道に旅をしたことがあります。しかし当時は切符を買うのにも今にはない面白さがありました。まず、北海道行きの切符を買うとき、今みたいに自動券売機では買えません。そこで窓口で切符を学割で買おうとすると、「中学生が一人でなんでそんなところに行くんだ」と言って素直に売ってくれない。家出少年と疑っているわけです。「実は蒸気機関車の写真撮りたくて」とか説明しないといけなかった。今だとあまり考えられないですが、対面で売っている駅員さんが子どもの暴走の歯止め役にもなっていました。
また当時は列車の指定席も徹夜しないと買えませんでした。でも僕はそれが大好きで、指定席の切符が欲しいという人が近所にいると、僕が取ってきますと言って、自分の列車じゃないのに徹夜して取ってきたりしていたんです。まだみどりの窓口になる前、新宿駅の国鉄旅行センターで切符を買うために、西口広場で一晩並んでいると、一緒にいる人達から暖かいものをもらったのを覚えています。徹夜している者同士、連帯感があったのでしょう。子どもは僕だけでしたから目立ちました。今思えば、鉄道から社会というものを教わったのだと思います。ある程度知識を持っていないと旅行ができませんでしたから、まず知識欲から高める必要がありました。
そんな鉄道少年だった僕ですが、一方で新しいもの好きな面もありました。高校を卒業して、1977年にカシオペアに加入して以後、僕はキーボードを演奏し続けてきました。これもキーボードというデジタル楽器が当時最先端だったからというのがあります。ヤマハのキーボードに「DX-7」という名機があるんですが、この開発に僕が協力して、自分で音色を作ったこともありました。自分で音を加工するために、パソコンのマッキントッシュを1980年代から使っていました。