「何も考える気がない無責任なあなたは父親失格! 実家に帰ってお義母さんの“息子”してなさい!」と妻は大激怒でござる。拙者、妻を安心させようと思っただけでござるのに。

「そもそもね、人類が誕生してから今までの歴史を1年とすると、男性は12月31日の朝までは狩猟をして暮らしていたんですよ。先々を心配してビビっていたら、危険な狩りはできません。『なんとかなるさ』という冒険心が原動力。そんな男性が定住を始めて1日足らずで、集団で子どもを育てながら男性が獲物を持ち帰るのを待っていた女性と同じように慎重になれと言われても、しょせん無理な話」

 その通り、よくぞ言うてくれました! 男の「なんとかなるさ」は冒険心の表れでござる!

■男女間の「完璧な同意」は幻想

「もちろん、女性が先々の小さなことを心配して準備するのも本能のなせる業です。わが子の微妙な変調を瞬時に察知して、命に関わる病気を未然に防ぐ『母の勘』は、太古からの守る本能によって研ぎ澄まされたもの。母は心配することで子どもを守り、父は体を張って家族を守る。子育てにはこの両方の守る力が必要なのです」

 拙者とて、何も考えていないわけではなく、命がけで家族を守り切る覚悟に燃えておることを、妻に理解してもらえぬのは、やはり話し合いが足らぬのか。

「いいえ、とことん話し合えばお互いが理解しあえると思うのは、幻想にすぎません。夫婦はまったく同じ人間ではありませんから、必ず意見の相違は出ます。むしろ深く話し合えば話し合うほど違いは明らかになり『完璧な同意』は得られなくなる。結局は、どちらかが譲るか、お互いに妥協するしかないのです。ならばどちらかがさっさと決めて、もう一方はそれに従うほうが物事はスムーズに進みますよ」

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