新型コロナウイルス感染防止のため外出を自粛し、ストレスをため込む夫婦が増えている。SNS上では「コロナ離婚」という言葉も生まれた。昨年12月に16年ぶりに見直された養育費だけでなく、引っ越し代、新居家賃、教育費と、離婚を考える上で避けて通れないのがお金の問題だ。別れるための値段を調査した。
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「はた目には、仲の良い夫婦に見えていたと思います。けれど、今思うと、家族をつなぎとめていたのは愛情ではなく『お金』だったのかもしれません」
こう語るのは会社員の太田慎太郎さん(仮名・59歳)。結婚30年目にして、「熟年離婚」に向けて準備中だ。
考え始めたのは2年前。発端は、ある事件を太田さんが起こし、警察沙汰となったことだった。釈放後、帰宅すると妻から刃物で追い立てられ、強制的に別居生活が始まった。半年後に帰宅するまで、妻や子どもとの間で発生したやり取りは公共料金の支払いなど、お金に関することのみ。
「家にお金を入れるだけが、自分の存在意義なのか」
疑問を感じ、別れの意思を固めていった。
問題は離婚費用だ。1年後に定年を迎え、現在の手取り給与は月25万円。うち約10万円を生活費として家族に渡している。
「別居代や弁護士費用を合わせて、最低100万円は必要。お金さえあれば、すぐにでも行動に移している」
太田さんは、そうつぶやく。そもそも、離婚にはいったいどの程度の出費を見込んでおく必要があるのか。公認会計士の森井じゅんさんは離婚時に発生する費用として、大きく「住居費」「弁護士費用」「保育料」の三つを挙げる。
●住居費
実家に戻る場合は不要だが、新居に越す場合は必須。
「敷金・礼金に、引っ越し代や家具・家電代を加え、最低60万円程度は確保してほしいです」(森井さん)
●弁護士費用
養育費や慰謝料など、弁護士を間に入れ、調停を申し立てる場合に発生。
「手続き段階で発生するお金を『着手金』、調停・訴訟の区切りがついた時点で発生するお金を『報酬金』と呼びます。両方合わせて50万円程度になることが多い」(同)