前出の公認会計士・森井さんは、こう指摘する。

結婚や出産を機に離職した場合、再び正社員に戻るのは高いハードルです。資格や語学など得意分野を生かし、起業やフリーランスとして働く道もあります。会社員と比べて収入が不安定である点には注意してください」

 離婚の経験を生かし起業したのが、緑川陽子さん(46)。都内で離婚女性向けの不動産会社「アベリア」を経営する。20歳のときに結婚し、2人の娘をもうけた。下の子が小学校に入ったとき、賃貸仲介会社でパートを始めた。その後、建築会社に正社員として就職。結婚後、独学で宅建(宅地建物取引士)の資格を取得していたことも武器となった。

 だが、「家庭を守るのが女の役割」と考える夫との間で対立が増えた。別居生活を経て、38歳で離婚が成立した。「事情を話しづらい離婚女性の住まい探しをサポートできれば」との思いから、17年に会社を設立。現在の会社売り上げは年間1800万円で、生活面での支障は感じていない。

「離婚してなお、時給や会社に縛られるのは大変。力と気合があれば、起業もいいと思います」

 いざ離婚するとき、お金でもめない心得はあるだろうか。スムーズに別れるための「3カ条」を前出の弁護士・三輪さんに聞いた。

(1)財産形成は計画的に

「日頃から、家計は一方任せにしないこと。配偶者名義の銀行口座や保険がいくつあるのか、婚姻中から把握しておきましょう」

(2)公正証書もしくは調停調書を残す

「『公正証書』とは、公証役場で公証人に作ってもらう証書のこと。これらがあると、養育費が払われなかった場合も財産の差し押さえ(強制執行)ができます」

(3)公的制度を活用する

「児童扶養手当、生活保護など、離婚後に頼れる公的制度は事前に調べておくといいでしょう。引け目を感じず活用してほしいです」

 結婚は愛に始まり、お金に終わる──。

 そう言っても過言ではなさそうだ。「離婚のお値段」、夫婦仲が円満なうちから見積もってみてもいい。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2020年5月1日号