ケアマネジャーのAさん(東京都)は、医療機関から依頼があった男性(70代)のケアプランの作成に頭を抱えていた。
【図で見る】在宅サービスの利用控えなどによる心身の機能低下は?
ケアプランは、介護サービスを利用するために必要な介護計画書で、ケアマネジャーが当事者やその家族らと話し合って作る。
男性は3月、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された。入院して治療し、2度のPCR検査で陰性だったことから、退院。だが、後遺症で呼吸器障害が残ったため、自宅療養をしながら訪問リハビリや訪問介護を定期的に受けなければならない状態になっていた。
Aさんは訪問介護を行っている事業所に連絡し、男性の介護を依頼しているが、男性が感染者だったことを伝えていることもあり、どこからもいい返事がもらえていない。
「陰性になった患者さんが再度、陽性になったという報道もある。新型コロナについてはまだわかっていないことも多く、陰性になったとしても、受け入れる事業所にとっては不安やリスクが残ります」(Aさん)
新型コロナは、利用者にも事業者にも影を落としている。
今年2月末、名古屋市のデイサービス(通所介護)事業所でクラスターが発生し、63人の高齢者が感染、12人が亡くなった(3月15日時点)。
居宅系介護サービス(デイサービスなどの通所系と、訪問介護の訪問系がある)に詳しい東洋大学ライフデザイン学部の高野龍昭准教授は、
「これ(名古屋の件)で一気に通所系、訪問系の事業所に緊張が走った」
と振り返る。クラスターは3月末には封じ込められたが、その後、全国で休業する事業所が相次いだ。
厚生労働省のまとめによると、全国への緊急事態宣言が出た4月13~19日に、感染防止などのためにサービスを休業した事業所の数は全国で909件。その1週間前の約1.7倍に増えた。
休業とまではいかなくても、サービスの提供時間を短縮したり、受け入れ人数を減らしたりした事業所は多い。
「一人でも感染者を出したら休業しなければなりませんし、風評被害によって利用者が減るリスクもある。多くの事業所が、自身の運営するデイサービスがクラスターの拠点になることを恐れて、サービスを縮小しています」(高野准教授)