こうした休業や事業の縮小は、介護の現場に負の連鎖を引き起こしている。

 一つは、事業所の経営面だ。

 利用者が入居し、毎月決まった額が入る特別養護老人ホームなどの施設系の事業所とは違い、居宅系は、提供したサービスの内容や量によって介護報酬の額が決まる。当然だが、利用する人や量が減れば、額も減る。

 事業所に報酬が入るのは、サービスを実施した月の2カ月後。緊急事態宣言が出た4~5月の収入減が実際に事業所の経営を圧迫するのは、6月末~7月だ。

「そもそも、居宅系の介護報酬は、度重なる介護保険制度の改正で、かなり引き下げられてきた。以前から、赤字覚悟で事業を継続しなければならないという状況が続いていました」(同)

 そこに、新型コロナが追い打ちをかけた。もともと体力がない小規模の介護事業所は、倒産や閉鎖などに追い込まれる可能性が非常に高いという。

 切迫した状況は数字からも見て取れる。

 全国介護事業者連盟の調査では、回答を寄せた約1800カ所の事業所のうち、4月上旬の時点で、経営に影響を受けている、と答えたのは、通所系が82%、訪問系が31%。対して、施設系の特養は23%にとどまっていた。

 もう一つの負の連鎖は、利用者に対するものだ。

 前述した、デイサービスで集団感染があった名古屋市は3月上旬、市内の二つの区(緑区、南区)の通所系の事業所など126カ所に、2週間の休業要請を出した。高齢者の外出自粛も求められ、介護を必要とする人たち(要介護者)がサービスを受けられない事態となった。

 緑区の居宅介護支援事業所でんじやまのケアマネジャー、水野勝仁さんが担当している要介護者(要介護1)のBさん(80代)は、デイサービスを利用していたが、休業要請が出たことで通えなくなった。

 要請が解除された後、水野さんはBさんの自宅を訪れ、家族に様子を尋ねたところ、Bさんはずっと自室に引きこもり、認知症が進んでいた。食も細くなり、2週間で4キロ減っていた。

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