2014年にオプジーボ(同ニボルマブ)が、17年にはキイトルーダ(同ペムブロリズマブ)が登場。この2剤はPD−1阻害薬だが、その後、抗CTLA-4抗体のヤーボイ(同イピリムマブ)、2種のPD−L1阻害薬が加わった。昭和大学の鶴谷純司医師はこう話す。
「肺がんをはじめさまざまながん種で、複数の免疫チェックポイント阻害薬を併用する新たな治療法の研究も進められています。がんを根治できなくても、糖尿病などと同じように薬を使いながら普通に生活できるようになるかもしれない。そんな未来は遠くない、と考えています」
分子標的薬の登場で「個別化医療」も進んだ。分子標的薬はターゲットにする分子を発現していなければ、効果は期待できない。そのため、手術や生検で採取したがん細胞を調べ、効果が期待できるタイプかどうかを判定する。
判定には、標的分子ごとの指標(バイオマーカー)が使われるが、一度に複数の遺伝子変異を調べる「がん遺伝子パネル検査」も実用化され、19年6月にがんゲノムプロファイルとオンコパネルシステムの2種に保険が適用された。
薬物療法の最大のデメリットは、副作用だ。とくに殺細胞性の抗がん剤は正常な細胞にも作用するので、副作用が現れやすく、生活の質を低下させるばかりでなく、治療を続けられなくなることも。また、標的を絞り込んで攻撃する分子標的薬は、抗がん剤に比べると副作用は軽めだが、薬特有の副作用もある。鶴谷医師は言う。
「とくに根治を目指している場合、減薬したり途中でやめたりすれば、治療が不十分になってしまう。治療を完遂するには、副作用対策が不可欠です」
現在は薬剤ごとに起こりうる副作用を予測し抑える薬を事前に投与したり、副作用症状をやわらげるケアをするなど、薬物療法をサポートする「支持療法」が充実。医師や看護師に加え、薬剤師、歯科医や歯科衛生士、栄養士など専門職がチームを組んでサポートする病院が増えてきた。鶴谷医師は言う。
「患者さんはチーム員に副作用の状況を伝えることが重要です。外来化学療法室がある病院は、チームを配置していることが多いので、参考にしてください」