一つは6月に刊行された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」。日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が、日本老年医学会の協力を得て作成した。総論と各論(造血器、消化管、呼吸器、乳腺)で全12項目の臨床で生じる疑問を設定し、推奨する対策方法と解説を加える形でまとめてある。

 もう一つは、日本がんサポーティブケア学会のホームページ上で公開されている「高齢者がん医療Q&A」。同学会が高齢者のがん診療にかかわる研究団体などとともに、現時点のエビデンスを集積・解析し、Q&Aの形で整理して解説を加えたものだ。薬物療法だけでなく手術や放射線療法のアドバイスも含まれている。相羽医師はこう話す。

「それぞれ特徴があるので、現場の医師には両方を診療の参考にしてもらいたいと考えています。しかし両方とも初版であり、今後改訂を重ねて現場でしっかり活用できる、より完成度の高いものにしていく必要があるでしょう」

 相羽医師はこう続ける。

「ガイドラインはあくまでもガイドにすぎません。医師は、患者さん自身が満足する人生を過ごせるように、患者さんの背景や希望を考慮し、ガイドラインも参考にしながら適切な治療を提案することが大事です。一方、患者さんも『高齢だから抗がん剤はやらない』とやみくもに拒否するのではなく、何をすればどのような効果が期待できるのか、医師からしっかり説明を受け、理解したうえで判断してください」

 なお、さまざまながんの手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。「手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・谷わこ)

≪取材協力≫
昭和大学 先端がん治療研究所所長 鶴谷純司 医師
戸田中央総合病院 腫瘍内科部長 相羽惠介 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より

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