大島さんが梶田さんから聞いた話によると、孫たちの父方の祖父はすでに亡くなっていたが、祖母が介護施設に入った後、何度もトラブルを起こして施設を変わらざるを得なくなり、その度に娘婿や孫たちが対応していたという。

「梶田さんが心を開いて、お孫さんたちの話をちゃんと聞けていたら、縁を切らなくても済んだかもしれません」(大島さん)

 大島さんは、「気が変わったらいつでも連絡してね」と伝え、梶田さんの入居する施設と連携をとっている。

「私が梶田さんの娘だったら、自分の母親にそんな寂しい最期を迎えてほしくありません。私は、梶田さんの心が穏やかになり、また自分から孫に会いたいと思ってくれることを期待しながら、見守っています」

 生前整理は、物・心・情報(手続き関係)の整理だ。この3つをバランス良くおこなうことができないと、人生に後悔を遺してしまう。梶田さんは83歳と高齢だが、健康に恵まれ、希望の施設に入所することができた。しかし、自分の身の回りの物や手続きなどの生前整理はできたかもしれないが、心の整理はまだのようだ。

「当事者が望めば、生前整理診断士が中立の立場で家族の話し合いの場を作り、みんなの意見を取りまとめることで、家族が和解するケースはあります。いざ話し合いをしてみると、揉め事の原因は、実はそれぞれの勘違いだった…ということも珍しくありません」(大島さん)

 梶田さんが孫たちと和解して、後悔のない最期を迎えられることを願わずにはいられない。(取材・文/旦木瑞穂)

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