もちろん、病気を疑った。
最初は一般内科や精神科で診てもらった。だが、原因はわからない。それどころか、「よく眠れるとはいいじゃないですか。他の患者さんは眠れなくて悩んでいるのに」といった無神経な対応をされたことさえあった。
その後、インターネットで調べた睡眠障害専門の医療機関で睡眠ポリグラフ(PSG)検査(睡眠の質や量を調べる検査で、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などの発見に役立つ)を受けたが、異常は見つからなかった。
「結局、このときは20人以上の専門医に診てもらいました。でも、やはり原因はわからないまま。ナルコレプシー、特発性過眠症……。診断は行く先々の医療機関によって、すべて違いました(過眠症の解説は後述)」
大学卒業後は、1日11時間程度の睡眠を取り、パートで生計を立てる。通勤時間がかからないよう、勤務先は自宅の近くにした。だが、こうした働き方さえ難しい過眠症患者は少なくないという。睡眠時間が後ろにずれる「概日リズム睡眠障害」を合併している人も多く、同じ時間に起きることができないからだ。
「患者会には職場を3回以上解雇された人もいます。切実な問題です」
過眠症について、日本大学医学部客員教授で東京足立病院副院長の内山真医師(精神科医)はこう解説する。
「過眠症には大きく分けて、脳の機能に関連して起こるもの、夜間睡眠の質や量の低下で起こるものがあります」
前者の代表的なものが「ナルコレプシー」や「特発性過眠症」で、後者で質の低下で起こるのが睡眠時無呼吸症候群だ。
このほか、うつ病、甲状腺の病気、がんなど別の病気の症状の一つとして、症状が表れることもある。ちなみに、前出の小嶋さんのケースは、最終的には難病に伴う睡眠障害であることがわかったという。
ナルコレプシーは最近の研究で、オレキシンという覚醒を維持するために働く脳内物質の不足が原因であることがわかってきた。
睡眠障害に詳しい、すなおクリニック(さいたま市大宮区)院長で精神科医の内田直医師によると、代表的な症状は、日中に耐えがたい眠気に襲われ、眠ってはいけない状況下でも眠ってしまう睡眠発作。一方で、夜間は途中で何回も起きる中途覚醒が起こる。