西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、メジャーリーグで奮闘する日本人選手たちを称賛する。
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海の向こうのメジャーリーグの日本選手、とりわけ投手が素晴らしい結果を残している。
開幕直前の練習で頭部に打球を受けたヤンキースの田中将大は致し方ない。あせって球数を増やし、後遺症が出ては意味がない。ヤンキースもそれをわかっているから、球団は10球ずつ球数を増やしている。白星がつかないと、精神的にゆとりが生まれないだろうが、そこは百戦錬磨の投手。いずれ勝ちはつくと信じている。
ツインズの前田健太が18日(日本時間19日)のブルワーズ戦で、八回までノーヒットの快投をみせた。九回先頭に初安打を許し、ノーヒットノーラン達成はならなかったどころか、救援陣が打たれて4勝目を逃した。それでも素晴らしい投球である。三回1死から五回まで球団新記録となる8者連続三振を奪った。とにかく直球で空振りをしっかりと取れている。
前田も日本なら打たれることのない145キロから150キロの直球はメジャーでは平均でしかない。当然、低めへの意識が強くなるものだ。ただ、今やフライボール革命でローボールヒッター(低めが得意な打者)が増えた。そうなると、勇気を持って高めをつく投球が必要になる。そういったことがしっかりと頭に入ってきたのではないか。この試合でもベルトよりやや上の球で空振りを数多く取れていた。
さらに言えば、ドジャースでは先発が飛んだり、中継ぎに回ったりしたが、ツインズでは先発として、ローテーションを任されている。先発投手はしっかりとルーティンを守ることが、リズムを生む。1度や2度の失敗で外されないゆとりも、大胆な配球を生む。
メジャーリーグではいろいろなデータ会社や動作解析の会社と組んで、相手打者や投手の動き、軌道(打者ならスイング軌道、投手なら球の軌道)を分析する。その上で、コンピューターで確率を計算し、より効果的な配球を導き出してくれると聞いた。そうなると、すべての球種をムラなく、制球良く投げられる投手は有利。制球力と変化球の多彩さにたけた日本投手なら、なおさらだ。