小林さんは、今日もまた表参道のサロンに立つ。メイクレッスンを受けにくる女性たちの、心も元気にするために。「何をやってもうまくいかない時、自分のことがイヤになってしまうときは人生には必ずあるんですよ。でも、うまくいかないことや失敗だらけの時間があって傷ついたり、考えたりするから、ひとはそこから何かを学んで、前に進めるものなのよ。私自身が、そのいい例でしょう?」
笑いを交えながら、レッスンが始まる。
転んでは立ち上がり、何回でも再生する。
ひとつのことを究め、現役で走り続けるための極意が、小林さんの中には詰っているのだ。(文/ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)
小林照子(こばやし・てるこ)
美容研究家。ヘア&メイクアップアーティスト。1935年、東京都生まれ。東京高等美容学院を卒業後、小林コーセー(現・コーセー)に美容部員として入社。数々の大ヒット商品を手掛け、85年、同社初の女性取締役に就任。その後独立・起業し、美容ビジネスの企業経営や後進を育てる学校運営をおこなっている。『人生は、「手」で変わる。』(朝日新聞出版)、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)、『小林照子流 ハッピーシニアメイク』(河出書房新社)ほか著書多数