◆特選六句
運命じやなかつた試着したセータ(七瀬ゆきこ)
これぞ運命の一枚との出会い! とホホホ、試着してみてトホホ……。
冬日向見合いの顛末聞いている(藤田敦子)
やっと見合いしてくれてホホホ、その顛末(てんまつ)を聞いてトホホなのか(笑)。
氷下魚毟るいつ嫁さんに話そうか(ちびつぶぶどう)
氷下魚(こまい)を毟(むし)りつつ、嫁さんの表情を読んでいるのだ。この後、嫁さんはトホホなのか、ホホホとなるか。興味津々。
湯婆や寿命しづかに来る家電(川越羽流)
家電というヤツらは、なぜか同じ頃に寿命を迎える。多額の出費が重なる。現状はトホホだが、湯婆(ゆたんぽ)を抱く姿は、なんだか可笑しくて愛せる。
妻もまた特売の葱持ち帰る(西村小市)
お! 特売だと買って帰った葱(ねぎ)。妻も同じのを買ってきてたという小市民的トホホだが、この夫婦の暮らしぶりは、いかにもホホホと好ましい。
黒ひげの危機免れる二日かな(あみま)
「二日」は正月二日を指す季語。黒ひげ危機一発ゲームをやってるのだ。トホホになりそうな危機を免れ、思わずホホホ。家族団欒(だんらん)という言葉の意味を、今年はほのぼの味わいたいものだ。
(寄稿)
※週刊朝日 2021年1月15日号より抜粋