「コロナ禍で、学びを止めてはならないという危機感が共有されたことは大きかった。不安だからこそ立ち止まるのではなく、一歩踏み出そうと」(谷さん)

 そもそも国がICT教育を進める目的は、これからの社会で必須とされる情報の活用能力や他者と協働する力などを育むことにある。その必要性は10年以上前から声高に叫ばれながら、日本は国際的に大きく立ち遅れてきた。教育ICT化のコンサルティングを手がけるフューチャーインスティテュートの佐藤靖泰(やすひろ)さんによれば、学校休業でICT活用のメリットは広く認識されたものの、対面授業が復活したことで再びアナログに戻ってしまった学校が多いという。GIGAスクールでその状況を打破できるのか。

「せっかく1人1台になるPCを、いかに日常的に使うかがカギです」(佐藤さん)

 先の奈良市では、課題の提出からメール、ビデオ会議、複数人での文書編集までをオンラインで完結できるグーグルのサービス「Google for Education」を導入した。教員・児童生徒全員にアカウントを付与し、端末の自宅持ち帰りもOK。パスワードの管理も教員ではなく、子どもたちに任せることにした。

 既に「日常使い」が進んでいるのが冒頭の埼玉県戸田市だ。

■教員の腹落ちがカギ

 GIGAスクールで何から手をつければいいのか──同市教育委員会には今、問い合わせが殺到している。5年前の就任以来、学びのICT化を推進してきた戸ヶ崎勤教育長が指摘する。

「戸田市では、システムに詳しい行政の担当者と学校現場出身の指導主事がチームを組んでいます。一番重要なのは、ネットワークにつながらないなどのトラブルをすぐに解決できる体制づくり。いくら授業での活用法を研究しても、スムーズにつながらなければ、先生たちも意欲を失ってしまいます」

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