世の中どこもかしこもデジタル化する中、秘境のように取り残されてきた教育の世界。パソコンを1人に1台整備する「GIGAスクール」元年の今年、状況は果たして変わるのか。AERA 2021年1月18日号では、ICT化が進む教育現場を取材した。
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「サンタがプレゼントをくばる」「ねこがゆきをなげる」
昨年12月、埼玉県戸田市の戸田東小学校を訪ねた時、2年生のクラスでは子どもたちが「冬を感じる文」をノートに書き終えたところだった。ほどなく子どもたちはタブレットの画面上でサンタや猫の絵を文章通りに動かし始めた。「国語の授業でプログラミングも学んでいるんですよ」と小高美惠子校長。こうした光景を全国の小中学校で当たり前にするGIGAスクール構想が今年、始動する。
構想が打ち出されたのは2019年。24年3月末までに、全国の小中学生約1100万人に1人1台のパソコンと高速ネットワーク環境を整備する計画だった。しかし、新型コロナ感染拡大による学校休業でICT(情報通信技術)化が急務となり、計画を21年3月末に前倒しした。全国一斉に端末確保に動きだしたため、需給が逼迫。いま多くの自治体は3月までに整備を完了できるか気を揉んでいる。
そんな中、昨年9月の早い段階で整備を完了したのが奈良市だ。同市では11月以降、複数の児童・生徒が新型コロナ陽性患者の濃厚接触者と特定され、自宅待機を要請された。が、すでに1人1台配布が終わっていたため、待機期間中も自宅からいつも通りの授業を受けられた。奈良市教育委員会学校教育課の谷正友係長は、市町村別ではなく県全体で共同調達に取り組んだ成果、と説明する。
■「自宅持ち帰り」もOK
実は奈良県はICT教育に関して優等生だったわけではない。20年3月時点で教育用パソコンは5.6人に1台と全国平均(4.9人/台)以下、教員のICT活用指導力も全国調査で最下位クラスだった。