2019年12月初旬、中国で発生したとみられる新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は全世界で猛威を振るい、2021年2月12日の時点で感染者数は約1億777万人となっている。
現在発売中の『医者と医学部がわかる2021』では、収束の道筋がいまだに見えないなか、コロナと闘う3人の医師たちの姿を取材した。1回目は、新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れ、院内でクラスターも発生した現場で働く医師の使命をお届けする。
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「現状は『しんどい』の一言です。新型コロナの流行以降、すべてが変わりました」
児玉華子医師は、コロナ禍での医療現場の状況をこのように話す。
北里大学医学部を卒業後、同大の膠原病・感染内科学教室に属する児玉医師は、3年前から独立行政法人国立病院機構相模原病院へ出向している。同院は、新型コロナの患者を受け入れている。
「院内では全職員にアイシールドとマスクの着用が義務づけられているほか、予約外の外来や緊急外来の際には、発熱がなくても防護服と手袋2 枚、キャップ、フェイスシールドを着用します。特に夏場は暑くて大変でした」
最前線で新型コロナに対応するなか、この感染症の怖さは「容体の急変」にあると感じている。
「朝は容体が安定していても、急変して、夜には亡くなってしまうこともあります。重症化していく患者さんに対し、例えばCT画像検査をしたくても、そのためには検査室までの動線確保のほか、検査後の消毒、一定時間以上の換気が必要です。迅速な対応が難しいケースも出てきます」
また、感染拡大防止のため、患者家族の面会も禁止となっている。
「お亡くなりになった場合、感染防止のため、火葬された後の対面となってしまいます。少し前までは元気だった患者さんの死に目にも会えない。これはご家族にとってもショックが大きいことでしょう」
■感染防止を難しくする新型コロナの「無症状」
2020年10 月下旬には、同院でクラスターが発生し、院内スタッフや患者12 人の感染が確認された。