公立中高一貫校の適性検査や、私立中の適性検査型入試の洗礼を受けた生徒は、6年後の大学受験でも有利なのだろうか──。
東京の私立中でいち早く適性検査型(公立一貫型)入試を採用した宝仙学園共学部理数インターでは、今年の高3生160人中34人が適性検査型入試で入学していた。中野望教頭兼入試広報部長によると、
「6年前の中学入試の得点と共通テストの自己採点結果の間に相関関係は見られなかった」
といい、適性検査型入試で入学した生徒の共通テストにおける優位性を示すエビデンスは得られなかったようだ。
同校の右田邦雄副校長は、適性検査型入試の問題作成を統括している。教科横断型のため、新学期早々から毎月2回、各教科の担当教諭が作問会議を重ね、夏の終わりに完成させる。知識だけを問う問題は、会議で容赦なくボツにするという。
「思考力重視といわれる共通テストだが、まだまだ知識を問うている問題が多い。本校の公立一貫型(適性検査型)入試のほうが、よほど思考力を意識して作問している」
そう胸を張る右田副校長は、さらに続けた。
「生徒を見ただけでどの入試方式で入ってきたかはわからないが、どんな勉強をしてきたかはわかる。小さいころから塾で受験勉強ばかりしてきた子は、4択問題には強いが、記述式問題には弱い。難関大学の入試では、どんな本を読んできたか、どんな人と話してきたかがものをいう。東大2次試験の英作文の問題を見ると、パターン化した対策ではとても太刀打ちできない、深い思考力が問われている」
■探究や独自教科が奏功
同校では、中学からアクティブラーニング型・課題解決型グループ学習の「教科理数インター」や読書プレゼンなど、探究や発表の機会を多数つくっている。富士晴英校長は言う。
「人前で話すとなると、単なるスキルだけではもたない。個性を生かし自立して語れる子が、結果的に難関大学の記述式の答案を書けるようになる。普段から言語化する習慣が重要だ。中高一貫校は、中学からそうした力を養うことができる」