■手術が第一選択 タイミングも重要

 心臓弁膜症だとわかると、根治を目指す場合には、手術が第一選択の治療となる。現時点では、薬物療法は症状を抑えることはできても、治すという科学的根拠はないためだ。

「手術をするタイミングが大切です。慎重に決めて、患者さんご本人のライフスタイルや価値観、希望なども考慮して、手術方法を決めます。今は手術の選択肢が増えていると同時に、カテーテルによる内科治療も普及し始めています。いろいろな治療のバリエーションが考えられるようになっています」

 そう話すのは、東京医科歯科大学病院心臓血管外科教授の荒井裕国医師だ。2019年11月に開催された日本心臓弁膜症学会の会長を務めた。

「患者さんの病気の種類、病状、全身状態によって、どういう治療方法を選択すべきかを、外科と内科できちんと話し合って決めることが大切です。また、発症年齢にもよりますが、心臓弁膜症は、年月とともに再治療、再々治療が必要になる場合もあります。最初にどのような治療をおこない、その後どう治療をしていくかも慎重に決めるべきなのです」(荒井医師)

 心臓弁膜症は、今まで心臓の左側にある部屋の弁に発症した病気が重要視されてきたが、三尖弁という、肺から戻ってきた血液を右心房から右心室へ送る弁の病気も注目されてきている。

「三尖弁閉鎖不全症は、僧帽弁閉鎖不全症の手術の数年後に起こったり、不整脈の治療で入れたペースメーカーのリードが、三尖弁にある弁尖という膜にあたったりして起こることがあります。心房細動を持っている人では、弁の土台である弁輪が広がって、弁を変形させてしまうことがあり、それによって三尖弁閉鎖不全症を発症します」(同)

 三尖弁の逆流が起こると、足がむくみ、肝機能障害や腎機能障害が起こることもある。今までは利尿剤などを投与しての対症療法や、僧帽弁閉鎖不全症の手術と同時におこなうなど、三尖弁単独の手術はあまりおこなわれていなかった。

 現在は単独手術も増えており、将来的には、カテーテルを用いてクリップをかける、人工弁を埋め込む、といった治療が期待される。

 心臓弁膜症は他の心臓病との関わりも深く、これまでに心臓の病気があった人も要注意だ。動悸や息切れなど気になる症状があれば、早めに循環器科などを受診して治療を受けることが重要だと、両医師は重ねて強調している。

なお、心臓弁膜症の治療も含む心臓手術や心カテーテル治療に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター長 渡辺弘之医師
東京医科歯科大学病院 心臓血管外科教授 荒井裕国医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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