自民党の全敗に終わった4月25日の衆参三つの選挙。この結果は秋の自民党総裁選で無投票再選を狙う菅義偉総理にとって大きな痛手だ。
菅氏の前任者である安倍晋三前総理は、数々のスキャンダルで支持率が落ちて危機が叫ばれても、そのたびに選挙で大勝して求心力を維持してきた。何があっても、選挙に強い総理であれば、あらゆる批判は封じ込められる。その逆に、選挙に弱いというレッテルを貼られれば、何をしても人心が離れていくのは不可避だ。
政権成立直後に7割前後の支持率を誇った菅政権だが、最近は支持と不支持が拮抗する状況だった。それを考えれば、今回の全敗という結果はけっして驚きではないが、それでもなお、「全敗」の心理的インパクトは大きい。特に、10月の任期切れ前に必ず選挙がある衆議院議員は、このままでは戦えないと、不安を募らせるのは必至だ。普通なら、「菅降ろし」の風が吹いても不思議ではない。
しかし、昨年9月に総裁の座を争った二人の候補のうち、石破茂元防衛相は総裁選惨敗の責任を取って派閥会長を降り、いまや会員数も減少して総裁選に必要な20人の推薦人集めもできない。
もう一人の候補者、岸田文雄元外相は地元広島の自民党県連会長として今回の敗戦の責任が問われる状況。保守王国広島での敗戦で求心力がさらに落ちるのは確実だ。
3戦全敗でも、総裁候補の二人が失速している中では、「菅降ろし」の声を上げようにも、「で、後継は?」という最初の質問が出たところで、答えに窮することになるので、本気で声を上げるのは難しい。選挙も近いから、執行部に睨まれて、公認や選挙支援の面で嫌がらせをされたら大変だということで、自民党議員はとりあえず黙っていようということになる。
そんな中、4月26日の日経新聞に掲載された世論調査と解説記事を読んで気になることがあった。まず、次の首相としてふさわしい政治家の人気ランキングは、1位から順に、河野太郎24%、石破茂16%、小泉進次郎14%、安倍晋三8%、岸田文雄5%、菅義偉4%の順だ。菅氏の人気が非常に低いのがよくわかる。次に、石破氏は2位でまだ人気が高いのだが、石破氏は野党支持層や無党派層の人気が高く、自民支持層に限定すると、河野、小泉、安倍、石破、菅、岸田の順だ。いずれにしても、菅氏では選挙は戦えないのは隠しようもない。