その一方で、18名枠は、混迷を極めている。実績の少なかった選手が、ここに来て持ち味を発揮し、「みんなが活躍して、私が悩むようになってほしい」という指揮官の言葉を、現実のものとしたからだ。塩越は、Aマッチデビュー戦で、いきなり2ゴール。メキシコ戦では、飛び級を続ける大器・木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)も、難しいシュートを決めた。こうした状況を考えると、今回の合宿に集まった23名以外から、18名のリストに割って入る可能性は、極端に絞られてくる。

 数少ない逆転候補は、鮫島彩(大宮アルディージャVENTUS)か。今回の2連戦で、鮫島が主戦場とする左サイドバックは、宮川麻都、北村菜々美(以上日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)が出場。兼任するセンターバックでは谷のパートナーを、宝田沙織(ワシントン・スピリット)、土光真代(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、南萌華(三菱重工浦和レッズレディース)が務めた。個々の選手のデキは決して悪いものではなかったが、後ろのポジションだけに経験値は気になる。

 熊谷を除く6人のフル代表キャップ数は、全員を合わせても44。2年前の女子ワールドカップ・フランス大会では、宝田、南はピッチを踏んだが、宮川は不出場、土光、北村、高橋は選外だった。これに対して、鮫島のキャップ数は114。3回の女子ワールドカップ(2011、2015、2019年)と、ロンドン五輪に出場し、主力を務めてきたことはアドバンテージだ。

 高倉監督が、プレーと同じくらいに重視するオフの行動も、評価は高い。今季序盤は、やや出遅れた印象があったが、時間とともに動きは上昇曲線をたどっている。WEリーグのプレシーズンマッチ=ノジマステラ神奈川相模原戦では、左サイドで活発な上下動を繰り返し、復調ムードを漂わせていた。返り咲きがあっても驚けない。

 その他では、2年前の女子ワールドカップにも出場した小林里歌子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)や、長く競ってきた上野真実(サンフレッチェ広島レジーナ)。長期間、つかず離れずの関係にある猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)くらいに実績があり、チームコンセプトも理解している選手にのみ、挑戦権はあるはずだ。

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なでしこジャパンの競争力は増した?