2022年、「年金大改正」がやってくる。年金の受け取り年齢が一斉に拡大するのだ。しかも、「いつからもらうか」の判断はすべて受給者に委ねられる。選択肢が増えるのはいいが、どんどん複雑化して「まるでパズル」との指摘も出てきた。そんな“年金パズル”を3回にわたって解いていく。
関西地方に住むAさん(64)は、昨年から老後資金をめぐって数々の“決断”を下してきた。
大手企業を60歳で定年退職し、「外の世界を見たい」と別の会社へ移ったが、3年の契約期間満了で20年春に退社した。ハローワークでの職探し中に、まず判断を迫られた。
「『失業保険』をもらうかどうかで悩みましたね。60代前半に支給される国の年金をもらう手もあったからです。両方一緒にもらうことは認められていません。結局は、金額が多い失業保険を選びました」(Aさん)
秋には、「企業年金」の受け取り方が正しいかどうかを検証し直した。
「私は年金で受け取っていますが、途中で一時金への変更も可能と聞いたので、やってみたんです。でも計算すると、税金を考えても年金のほうが有利だとわかり、安心しました」(同)
21年春、定年後に取得したコンサルティングの資格を生かし、小さいながらも専門会社で職を得た。70歳まではそこで働けそうだという。
「だから目下の関心事は、65歳からの『公的年金』をどうするかです」(同)
ここでもまた、税金や社会保険料の計算の仕方を役所などで聞き、あれこれシミュレーションをしている。
「それらをもとに判断するつもりですが、一連の作業を通じて“知識”の大切さを痛感しました。いろいろなことを知らないと、これからの老後は大変です」(同)
Aさんの言うとおり、60歳を過ぎてからのお金をめぐる選択には、さまざまな制度についての知識が欠かせない。超高齢化が進むにつれて、制度はいっそう難解さを増しつつある。改正点などを早めに学び、身に付けた知識を組み合わせて自分なりの“正解”を導き出していく──これから年金を受け取る世代は、どうやらAさんのような取り組み方がお手本になっていきそうだ。