実は来年、2022年は、日本人の老後資金にとってエポックメイキングな年になるかもしれない。さまざまな制度の「改革」が一斉に始まるからだ。

 まずは老後資金の全体像を眺めてみよう。老後資金を構成する主要部分が、年齢ごとにどうなっていくかを時系列でまとめた。

 大きく三つの部分に分けて、「年金」「労働収入」「貯蓄・資産」の3グループだ。老後資金に詳しいフィンウェル研究所の野尻哲史代表が強調する。

「退職後、生活資金を賄うのはこの三つです。三つのバランスを考えながら、老後プランを組み立てていくことが大切です」

 なかでも主に来年から改正される点(一部先行も含む)は、「年金」グループに集中している。

 公的年金は、全加入者に共通の「老齢基礎年金」と、会社員や公務員など被用者に支給される「老齢厚生年金」に分かれている。65歳支給開始が原則だが、どちらも年金を遅くなってもらう「繰り下げ」が可能。今回、その年齢幅が拡大される。これまでは「70歳まで遅らせることができ、5年遅らせると年金額は42%増」だったのが、「75歳まで可能、10年で84%増」に変わる。

 繰り下げをせずに、65歳以降、年金をもらいながら会社で働く人向けには「在職定時改定」という制度が新たに始まる。これは、支払う保険料によって老齢厚生年金が毎年増額されるものだ。

「公的年金」に対して、「私的年金」に分類される企業年金も、年齢幅がそろって拡大される。

 加入者が運用の責任を負う仕組みで、約900万人が加入している「確定拠出年金(DC)」。このうち「企業型」では、加入できる年齢がこれまでの64歳までから69歳までに拡大される。60歳以降の加入について、今は「同一事業所での継続使用」という条件があるが、撤廃される。

 一方、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、17年から公務員や主婦も利用できるようになり加入者を増やした。こちらも、加入できる年齢が59歳までから64歳までに引き上げられる。ただし、会社員以外の国民年金の第1号・第3号被保険者だった人は60歳以降は国民年金に「任意加入」することが条件となる。

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