セリンクロは飲酒を始める1~2時間前に飲む薬である。副作用も人によっては様々に出るそうだ。とりあえず帰宅後、午後7時に飲んでみた。午後9時前に風呂を出た。いつもなら、冷蔵庫の酒に手が伸びる。
あれ……。
まったく酒を飲む気が起きない。副作用なのか、ちょっとだけ頭がくらくらし胸焼けがする。不思議な感覚だが、なんだか軽く酒に酔ったようでもあり、飲む気が湧いてこない。我ながら信じられないことだ。
セリンクロのデビュー初日は一滴も飲まずに寝た。妻と死別後、初の休肝日である。翌朝、7時に起きた時には副作用らしき状態は収まっていた。翌日も夜に服薬すると、前日と同じように飲酒欲求はまったく湧かず、一滴も飲まずに寝た。ただ、胸焼けと頭がくらくらする感じが強くなり、寝つきはとても悪かった。3日目はなぜか薬無しでも断酒できる気がした。いざとなったら服薬すればいいと実践したら本当に成功した。続く4日目も薬を飲まずに断酒に成功。
薬も確実に効くし、いつでも頼れるという心理的効果も感じる。「減酒って意外と簡単」。そんな自信が芽生えた。
だが、5日目は油断したか、飲酒欲求に自然に従ってしまい少しだけ飲んだ。反省してその後は服薬を再開し抑えたが、10日目に「大リバウンド」が来た。薬を飲まずにビール一杯だけのつもりが、がぶ飲みして200グラムくらいの純アルコールを摂ってしまい、翌朝は二日酔いでダレてしまった。
■減酒はゴールではない
治療開始から3週間。多量飲酒が8日、少しの飲酒が3日、断酒が10日。以前と比べたら大幅に改善しているが、やっぱりうまくいくようで、うまくいかない。
しばらくは飲んだ日、飲まなかった日を勝敗分けしていたが、やめた。連勝すれば油断するし、負けが込むとやる気をなくしそうだから。死別の寂しさが消えるわけではないし、コロナ禍が収束し自由が訪れたら、会食を我慢していた友人たちとも集まって乾杯するだろう。待ちに待ったその時に、自分はどうするだろうか。