内密出産を回避して、自分で育てると決意した女性が、子どもと1年以上も分離させられている。必要なのは親を判断する姿勢ではなく、支援ではないか。AERA2022年12月12日号の記事を紹介する。
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10月、千葉県中央児童相談所が1歳児を1年以上一時保護していることが明らかになった。判明したのは、熊本市の慈恵病院理事長・蓮田健氏が千葉県と同児相に公開質問状を提出したためだ。
千葉県中央児相の保護する子に関する質問を熊本の蓮田氏が公開で行ったのには理由がある。この子は2021年4月に内密出産を希望して来院した未成年(当時)女性の子どもだ。女性は病院の医師や相談員と話す中で自分で育てる気持ちを固め、内密出産を撤回して出産。母子は地元に戻り生活を始めたが、昨年10月、母親が心身の不調に陥り、児相に保護を求めた。その後、回復した母親は再び子どもを自分で育てることを望んだが、一時保護が続いている。
■身内の支援得られない
女性から相談を受けた蓮田氏が担当者に問い合わせたところ、説明が二転三転したため公開質問状の提出に踏み切ったという。
くしくもその4日前に発出された内密出産に関するガイドラインで、国は、内密出産を実施する医療現場に対し、内密出産を回避するよう妊婦を説得することや、回避した母子について、自治体の手厚い支援を要望している。この千葉のケースでは、どんな支援が必要だったのか、そして、なぜ一時保護は長期化しているのか。
「行政として母子保健の支援をどのように進めていこうとしていたのか、詳しく知りたいと思いました」と話すのは、全国の児相職員の研修を行う子どもの虹情報研修センターの川崎二三彦センター長だ(川崎の崎は正しくは右上の大が立)。
「保健師を中心とする母子保健行政には虐待予防の役割もあります。当該女性は身内等の支援を得られず若くして一人で初めての育児に直面していたわけですから、家庭訪問によってつながりができた後の保健師の関わりが重要です。育児に関するアドバイスはもちろん、女性の話に耳を傾けるだけでも孤立を防ぐ支援になると思います」