その翌日にも2人は公邸を訪れた。出迎えたのは、菅首相に加えて、河野太郎ワクチン担当相、和泉洋人首相補佐官、厚労省の大島一博官房長という面々。「首相動静」でも確認できる。異例の2日連続で菅首相と面会した理由は何なのか。麻生氏のグループも「飯塚病院」など医療施設を有している。

「実はその頃から職域接種が検討されていた。その情報を早くキャッチした巌氏らは職域接種を独占的にやろうと麻生財務相の威光をバックに菅首相に直談判したのではないかと噂になった。当時、国が直轄する大規模ワクチン接種センターを福岡では設置しないと決まり、どのような体制でワクチン接種をするか、明確ではなかった。その隙間を縫って九州エリアの職域接種の覇権を握りに来たと思いました」(前出・官邸関係者)

 2度の菅首相への直談判が実ったのか、桜十字グループの動きは速かった。九州、それ以外の地域でも、職域接種を多数、請け負ったという。

 職域接種が本格的に開始したのは、6月21日。桜十字グループの求人サイトを見ると、<ワクチン接種 短期アルバイト募集!【本】熊本エリアで、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に関わる看護師・事務の短期アルバイトスタッフを募集します>とあり、6月7日から説明会を始めていたという。

 菅首相との2度の面会から約3週間後に説明会を開始するという“早業”である。

「桜十字グループの手際の良さには驚きました。まだ職域接種の全容がわからない時期から、会場の確保、大企業へのセールスなどをかけていた」(九州の医療法人関係者)

 熊本の老舗百貨店グループなど九州の有名企業の多くで、桜十字グループが接種業務にあたったという。

「ワクチン接種業務はアルバイトをたくさん雇えること、会場があること、ワクチン供給が十分に受けられること。この3条件がそろえば、医療機関としてはおいしい商売だ。1回あたりの接種で、7000円が国から支払われる。1日に300~500人と接種できれば、短期間に大きな利益があげられます。人件費はアルバイトを使えば、抑えられるし、場所は企業側からの提供してもらえばいい。大手の医療法人は接種業務に興味を持っていたが、九州では桜十字グループの動きがどこよりも早かった。麻生氏と一緒に菅首相と面会していると報道があり、やられたと思いましたね」(同前)

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官邸への要請とは?