西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、東京五輪で金メダルを獲得した野球日本代表について語る。
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東京五輪が終わった。まずは参加されたすべての方々にお疲れ様といいたい。そして、断片的に伝えられてはいるが、日本のすばらしさをアスリートのみならず、世界の人々に映像を通じてわかっていただけたらと思う。新型コロナウイルスの感染状況は厳しいものではあるが、そこへの思いと切り離して、純粋に東京五輪が世界の人々に印象的なものであってほしいと思っている。
野球競技は金メダルを獲得した。公開競技だったロサンゼルス五輪以来の金メダルだ。野球は2024年のパリ五輪では採用されない。28年ロサンゼルス五輪からの復活を目指すが、日本はソフトボール、野球ともに金メダルを獲得した国として、競技復活の推進の先頭となってやらなければならない、そう感じている。
野球にもいろいろな見方があるでしょう。参加国にメジャーリーガーが含まれていないこと、参加がわずか6チームであること、負けても敗者復活できる大会方式。はっきり言って、開幕戦のドミニカ共和国戦、準々決勝となった米国戦などは戦力がそろっていたら、負けていた展開だった。ただ、相手戦力も考えて戦い、選手を無理なく起用した稲葉監督。公言どおりの金メダル獲得には心から拍手を送りたい。
ルーキーの伊藤大海(日本ハム)や栗林良吏(広島)をセットアッパー、クローザーに起用した采配は見事だった。大会を勝ち抜くカギは、実績にとらわれず、コンディションの良い者を思い切って使うことと考えていた。稲葉監督は選手を起用した時点から選手を疑うことはなかった。10日間ほどの戦い。そこはWBCとは違う。最初から、その場面を任せ、打たれたら監督の責任であると腹をくくっていた。稲葉監督が作り上げた日本代表というチームは寄せ集めとは思えない結束を感じた。それこそ、指揮官の手腕である。