鼻咽頭から検体を採取する場合、PCR検査と同じように、細長い綿棒(スワブ)を鼻から差し込み、喉(のど)の奥から検体を採取する。柳原教授はこうアドバイスする。
「ミスをしないためには綿棒を鼻の穴から上に向けて差し込むのではなく、水平方向に差し込まないといけません。鼻の穴は上方向にしか開いていないと思っている人が多いと思いますが、水平方向にも穴があります。怖がらずに挿入すれば、痛みもなく喉の奥に突き当たります」
しかし鼻咽頭の検体採取は、患者が身をよじらせるなどした場合、医師でもうまく採取できないことがあるという。
一方、鼻腔検体は鼻の穴の中に綿棒を2センチほど挿入し、5回転させ5秒待てばよい。自分で採取する場合、容易な鼻腔検体のほうがおすすめだ。海外では鼻腔検体が主流だという。
では、発熱など新型コロナの症状があるにもかかわらず、抗原検査で「陰性」の結果が出たときにはどうすればいいのか。
「出勤や通学は控え、翌日、再検査をおすすめします。症状があるうちは毎日検査するのがよいでしょう」(柳原教授)
文部科学省は7月以降、大学や高校、特別支援学校に抗原検査の簡易キットを配布。9月上旬からは小中学校や幼稚園などにも配布を始めた。感染が疑われる教職員や小学4年以上の児童や生徒が使用することを想定している。
中2と小4の子をもつ東京都の契約社員の女性(48)は新学期を控えた8月下旬、ネットで購入した簡易キットで抗原検査を受けた。家族全員が陰性だったが、安心はできないという。女性は「信頼できる抗原検査キットを学校ではなく、各家庭に配ってほしい」と訴える。
■教職員の負担は大きい
柳原教授も学校での抗原検査導入には否定的だ。
「医療者ではない教職員が子どもの検体を採取することは医療法上できません。文科省は小学4年生以上であれば、自分で検体を採取できるという見解だと思いますが、自分で採取できない子がいたら、すぐ隣で指導する教職員はくしゃみや鼻血が出る子の世話もしなければならず感染リスクもあり、負担は大きいと思います。学校経由で各家庭に配布し、小さな子は自宅で保護者に採取してもらうほうがよいでしょう」
精度はやや劣ってもその特徴を知り、簡易判定できる抗原検査をいかにうまく活用できるかが、新型コロナの感染拡大抑止のポイントの一つになりそうだ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年9月20日号