安倍政権と同じく前期近代型だった菅政権にも疲れてしまった私たちは、正反対である岸田首相の登場に癒やしを見た。でも、今は正反対であることが裏目に出て、支持率の急速な低下につながってしまっている。
「岸田首相は、安倍元首相のような『理念達成のためのパフォーマンス』を重視したリーダーではなく、『関係性を重視した調整機能』に重きを置いたリーダーです。そのため方向性が見えにくい。性格が違うのでそれは仕方ないとしても、いま問題なのは、その関係性重視の目が国民ではなく、内(党)へ向きがちになっていることです」
この先どうなるのか。法政大学大学院教授(現代政治分析)の白鳥浩さんはこう見る。
「支持率は好転せず、岸田首相の悲願の一つである『首相として来年5月の広島サミット(主要7カ国首脳会議)をやる』にも暗雲が立ち込める可能性があります」
挽回(ばんかい)の策はあるか。「外交の岸田」としては17日の日中首脳会談などをアピールポイントにしたいところだが、白鳥さんは経済面で「国民を取りこぼさないこと」を挙げる。
「その意味がわかりにくかった『新しい資本主義』に代わるもの、物価高に対して国民にわかりやすい経済対策を示すことです。『インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)』とも言っていましたが、若い人に投資をできるお金があるわけもない。初めから取りこぼす国民がいることを確信犯的に政策としてやっていたのでは国民の分断にもつながりますし、今後も世論から受け入れられないと思います」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2022年11月28日号を一部改変