ビブグルマンは18店掲載される(筆者撮影)
ビブグルマンは18店掲載される(筆者撮影)

 西荻窪の「佐々木製麺所」は、メディアにもあまり登場することのない隠れた名店。店主の佐々木幹広さんが脱サラして独学でオープンした店で、国産小麦の香り高い麺が自慢。佐々木さんの故郷・秋田の塩や醤油を使ったどこか懐かしい一杯を提供している。

「地元に根ざしたお店を目指してきたので、ミシュランの評価をいただき驚いています。これからも地元のお客さんを大切にしながら味を磨いていきたいと思います」(佐々木さん)

 今回、筆者が何より驚いたのが、新橋にある「はるちゃんラーメン」の受賞である。

 20年ごろから、「○○ちゃんラーメン」という名の新店が都内を中心に目立ち始め、ラーメンフリークの間で「ちゃん系」として話題になっていた。

ビブグルマンを受賞した「はるちゃんラーメン」は新橋駅前ビル1号館1階にある。温かみのある看板が目印だ(筆者撮影)
ビブグルマンを受賞した「はるちゃんラーメン」は新橋駅前ビル1号館1階にある。温かみのある看板が目印だ(筆者撮影)

■都内に急拡大した「ちゃん系」ラーメン

 神田の「ちえちゃんラーメン」や新宿、田町にある「えっちゃんラーメン。」、池袋や新宿の「ひろちゃんラーメン!」など、主に繁華街にオープン。どこも昔懐かしい雰囲気の中華そばを提供し、動物系の清湯のラーメンで、切りたてのチャーシューがたっぷりでパワフルな仕上がりが特徴的だ。かといってチェーン店っぽくはなく、それぞれの店で少しずつ味の違いがあるのが面白い。

 その「ちゃん系」から初のミシュラン受賞ということで、ラーメン界が盛り上がっているが、受賞した「はるちゃんラーメン」は今まで食べた「ちゃん系」の印象と全く違うことに驚かされる。

 ラーメンの作りはノスタルジックな豚清湯だが、その見た目の繊細さやじんわりとした味わいに独創性を感じ、筆者も一目置いている店だった。

「はるちゃんラーメン」。具はチャーシュー、味玉、ネギ、お麩、ノリ。お麩のピンクの色合いも良い(筆者撮影)
「はるちゃんラーメン」。具はチャーシュー、味玉、ネギ、お麩、ノリ。お麩のピンクの色合いも良い(筆者撮影)

「ちゃん系」の多くは、赤い看板に青磁の丼とわかりやすいノスタルジックさのある店が多い。だが、「はるちゃんラーメン」には独自の美学がうかがえる。看板も白地に可愛らしい文字、丼も独自のもので、ちょこんとのった麩(ふ)がラーメンに彩りを添える。ちゃん系の中でもオリジナリティーの強い店だ。

 店のある新橋駅前ビルは、お世辞にもミシュランの調査員が足を運ぶとは思えない場所で、その中で「はるちゃんラーメン」にミシュランの目が向いたのは驚きである。店主の野口晴子さんが1人で切り盛りをし、コの字型のカウンターでお客さんと笑顔でやり取りする。

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「ちゃん系」に見るラーメンの原点