撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

 配慮して注釈をつけたつもりですが、あくまで私がやりたかったのは早押しクイズの規格化ではなく、脳内で起こっていることのモデル作り。クイズ文化へのリスペクトとの間で随分葛藤しました。まあ、「型」は型として成立した時点から崩壊していくものだとも思うし、規格化を恐れていたら何もできないので、最終的には「まあいいか」で書いちゃった感じです。

――「クイズ王がボタンを早く押せる謎」がここに凝縮されていますね。

伊沢:各問題文については、先鋭化され競技化された早押しクイズだけではなく、昔のアマチュアクイズシーンで取り入れられていたようなものも採用して幅をとったつもりです。

 すべては「なぜ早く押せるのか」のロジカルな解説、「構文が頭に入っていて、そこから選び取っていく」という思考過程を具体的に描こうという試みのためのものですね。いくつかの方をベースに推測してボタンを押している、とはいえその型の例示がないと分かりづらい、だから型を例示し、網羅性を高めた、みたいな流れだったので、問題として面白かはともかく、説明しやすい例をもってこられるよう頑張りました。

 もっとも、今のテレビ番組でこういう早押しクイズをやっている番組は少ないので、2.5章としてテレビでの早押しとの接続を図ったりもしています。テレビを見ているときに沢山答えられると嬉しいよね、みたいな。理論的にはおもねらぬまま、TVガイドとしても面白い原稿になったのかなと思います。

※「伊沢拓司「『早押しクイズでの“誤答”は勝つための手段』クイズ王が分析するクイズの世界」へつづく

伊沢拓司
日本のクイズプレーヤー&YouTuber。1994年5月16日、埼玉県出身。開成中学・高校、東京大学経済学部を卒業。「全国高等学校クイズ選手権」第30回(2010年)、第31回(2011年)で、個人としては史上初の2連覇を達成した。TBSのクイズ番組「東大王」では東大王チームとしてレギュラー出演し、一躍有名に。2016年には、Webメディア「QuizKnock」を立ち上げ、編集長・CEOとして日本のクイズ界を牽引する。
Twitter @tax_i_ / QuizKnock http://quizknock.com/

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