撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

 あとは、やはり「アマチュアクイズ」にルーツを持つようなクイズコンテンツ、それこそQuizKnockなんかは代表的ですけど、そうしたものが一般の方の目に触れることも増えてきて。そういうときに、我々の背景にあるものが誤解されてしまうともったいないなと思ったんです。

 これまでの難問系クイズ番組って、解答理由の解説パートが難解だったり時間がかかったりという理由ですっ飛ばされてしまうケースが多くて、クイズ王がクイズ王になるまでの努力経過とかが見えづらかったんですよね。代わりに正解の根拠として使われたのが偏差値だったり、学歴だったりするわけですから今もそうした傾向は続いているんですが、種明かしをしない「マジック」のような演出手法というのが長く用いられていたわけです。これって再現性がないし、誤解もされてしまうもので。学歴があればクイズができるわけではない、ただただ勉強をしていればクイズができるわけではない、知識だけ蓄えればクイズができるわけではない。

 クイズというゲームを分析し、様々な方法で修練を積んで初めて「クイズというゲーム」それのみに強くなることができる、という本質的な構造を伝えていくべきタイミングだ、という思いが日に日に強まってきたんです。

 特に、私はそうした「マジック」を使う番組に多く出演してきましたから、後進のためにもある程度自分で自分のケツ拭かないとな、という思いもありました。

――1章の「クイズの歴史」では、膨大な資料に当たられたとのことですが、具体的にどのような研究を行われたのでしょうか。

伊沢:編集者の松浦さんに協力してもらって、国立国会図書館や朝日新聞社の書庫にある、「クイズ」にまつわる新聞、雑誌記事、書籍などを手当たりしだいに読みました。読みすぎてちょっとよくわからなくなった時期があったり、過去の文献が少なくてブラックボックスになっている部分があったり、そもそも書籍の記述が間違っていたり……苦難の連続でした。

 やはり過去の歴史の部分なのでデリケートな要素も多く、その時代に生きていたわけではないので肌感も理解しきれない。自分の目から見る史観を脱し得ない部分もあって、最終的には「QUIZ JAPAN」編集長の大門さんなどに相談しながらなんとかまとめました。

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「東大生ブーム」「東大王」「QuizKnock」についても分析