撮影:高野楓菜
撮影:高野楓菜

 現行のクイズブームについても、ただ私がどうこうしたというよりは、多くの人によって作られたクイズ文化の中で、たまたま私が目立つポジション、サッカーで言うならストライカーのポジションに立っていた、ゴール前にボールが回ってきたというだけ。ここまでボールを繋いできてくれた、アマチュアクイズのスーパープレーヤーたちがいるわけです。

 クイズの現場ではそういう人が頑張っていて、ただクイズを語る、クイズを書き記す、というところでいくと、前述の大門さんとか、青土社の「ユリイカ クイズの世界」に協力してくださった皆さんとか、どうしても数は減ってしまう。なので、現場にいる人達がもっと喋りやすいように、ということで、この本がたたき台になれば良いなと思います。

――2章の「問題文の分類」や「構造把握」の解説は見事でした。クイズがいかに「曖昧で無限の可能性のある言語」と深く関わっているか、問題文のデクレッシェンド構造、クイズの「推測の面白さ」や「発見の共有」など、クイズの奥深い「面白さ」がにじみ出る内容になっていると思います。

伊沢:こういう見方は、クイズをやっていない人には新鮮なものだと思います。もちろん型の話というのは古くからあって、長戸さんの名著『クイズは創造力』などでも触れられているんですが、「網羅」をテーマにするとかなり長くなる。それを、出版社さんに無理を言って実現しちゃったというのは、ひとつ誇れるポイントかなと思います。ある程度自分の考案した概念を交えつつ、理論についてもアップデートできたのではないでしょうか。

 とはいえこれだけの量を書いたので、書籍内で記述の矛盾が出ていないかはかなり気にしました。でもまだ漏らしがあるかもしれないので、今は戦々恐々としています。

 そもそも、クイズの「型」を示してしまうこと自体も恐れるべきことではあって。先程触れた「アタック25」的な構文とか、クイズの世界では「(旧)東大風」「シスエフ風」と呼ばれるような流派があったりとか、必ずしも型に当てはめられるような早押しクイズだけではないんですね。

 本書では理解のために「早押しクイズというのは、時間経過に伴い情報がだんだんと増えていく、前半で押すとハイリスクだけど解答権が取りやすい、後半で押すとローリスクだけど他人と解答権を争うことになるものだ」と定義していますけれど、これはあくまで多数派の意見で、言葉のゲームである以上は例外をいくらでも作れるわけです。だから、本来は「こっからここまでが『型』ですよ」みたいな書き方は誤認を生みかねない。

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「クイズ王がボタンを早く押せる謎」とは?