そこで、妻に「何かやり残していることはある?」と聞いてみたところ、海外に住んでみたかったと言います。それを聞いて、僕も外国の人に自分の料理が受け入れられるのかを試したかったことを思い出しました。また一緒に、次の夢を追いかけられそうで楽しみです。

妻 杉浦清美[44]トラットリアゴリアテ ホール、経理、制作担当

すぎうら・きよみ◆1977年、静岡県生まれ。名古屋造形芸術短期大学を卒業後、デザイン事務所に勤務。26歳で名古屋造形大学大学院に復学、修了後フリーランスに。デザイン事務所の立ち上げと勤務を経て、夫とともに独立開業

 独立する前の彼は、深夜に帰ってきて倒れこむように寝てしまい、朝はギリギリまで寝て飛び出していく毎日でした。今思えば、子どもが病気になっても私は誰にも頼れないどころか、それを話す人もいなくて精神的に追い詰められていました。夫と一緒にお店を経営するようになって、いつでも話ができること、お互いが何をしているかがわかることがこんなにも安心できることなのかとありがたく思えました。

 彼は極端に合理的な人で、普通の人は絶対しないような反応をします。いつも想像を超えた答えが返ってくるので、それが面白くて飽きることがありません。普段は大きな不満をためないようにしている分、小さなケンカはしょっちゅう。でも、幸せな家庭をつくりたい、お客様に喜ばれる良い店にしたいというゴールは同じなので、どうにか妥協点を見つけられています。

 ビジネスは最高に刺激的なゲームのようなもの。こんな面白い課題に夫婦で挑んでいける毎日が楽しいです。

(構成・森田悦子)

AERA 2021年10月25日号