「関係各所、ファンの皆様にもご心配をおかけしました。11月18日に北海道・真駒内で開幕するグランプリシリーズ・NHK杯に向けての対応は、すでに万全に完了しています。日本スケート連盟のみならず、ISU(国際スケート連盟)にも報告を行い、事態の対応についても了承を得ました。今後決してこのような事が無いように、検証とレビューにつとめます」(澤田氏)
それにしても、今回の一件でも判るように、演技を見ているだけでは分かりづらいのがアイスダンスの得点だ。転倒やステップアウトなど、比較的成否が判りやすいシングルのジャンプに比べ、要素のチェックは微に入り細を穿つ。ほんの僅か氷からブレード(刃)が浮いただけで大幅に点数が削られたり、ターンする角度に応じて得点が変動したりと、素人目には判断が難しい。
また、シングル競技であれば、一見判りづらいエッジエラーや回転不足などがあっても、中継では解説者が都度指摘する。しかし、アイスダンスの場合、評価部分があまりに細部にわたるため、詳細な解説は演技観賞の邪魔になってしまう。得点や減点の根拠が示されないために点数の予測がつかず、「アイスダンスは難解な競技」という印象を与えてしまいがちだ。
だが、ここでアイスダンスを敬遠してしまうのは少々勿体ない。
冒頭に紹介した村元・高橋組らの活躍ばかりでなく、今年の9月には來田奈央・森田真沙也組が、日本代表として初めてジュニアグランプリシリーズの表彰台に上った。数年前まではチーム・ジャパンの弱点と見なされていたアイスダンスだが、今や旬のカテゴリと言っていい。ルールや採点方法は難解だが、観戦を重ねツボが掴めれば、細緻な評価の基準も見えてくる。
たとえば、シングル競技のショートプログラムに該当するリズムダンス(RD)。全てのカップルが、「ラテン」の曲想に合わせて演技することを求められる。王道のラテン曲を使えばアピールはしやすいが、他の組とイメージがかぶってしまう可能性も高い。だが、真っ向勝負を避けるために斬新な選曲を行うと、「ラテンスタイルとは言い難い」と演技構成点が下がる可能性もある。曲選びの段階から、既に戦いは始まっているというわけだ。