今年の西日本選手権での來田奈央・森田真沙也組(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 今季、日本では、グランプリシリーズに先立つジュニアグランプリシリーズやチャレンジャーシリーズの開催が無かった。アイスダンスの採点の実地検証を行う機会が少なく、連盟の確認も無かったため、集計システムのミス発覚が選手権大会まで持ち越されてしまった。スコアに疑問を感じ、即座に確認にかかった澤田氏の直感と対応の速さは元選手ならではだが、集計の間違い自体は確かにコムネットのシステム設計上のミス。

「今年からの新しいルールを完璧に反映出来なかった。痛恨です。選手に申し訳ないことをした」(澤田氏)

 8月に行われた北九州オープンでも同様の集計ミスがあったのだが、その場にいた関係者は誰も得点の間違いに気が付かなかった。

「同大会は出場組も少なく、点数が順位に影響する事もなかったため、ジャッジやコーチの皆さんにも、微細な遺漏は目につかなかったのでしょう。比較的単純なミスでしたから、ここで連盟さんとチェックをしておけば、もっと早くに修正が出来たかもしれない、ということはあります」(澤田氏)

 採点ミスと言えば、トリノ五輪代表選考会を兼ねた2005年全日本選手権での事例を思い出すファンもいるだろう。先日、現役復帰を発表した織田信成に超過ジャンプの得点が入り、一旦は優勝とされてしまった試合だ。この時は、集計システムのエラーではなく、データをシステムに渡す時点で人的なミスが出た。

 これ以降コムネットでは、人的ミスも処理できるシステムを構築。現在では、ジャッジは演技の評価に専念し、その評価を入力すれば即時、各選手の得点が計算される、という形になっている。

「信頼をいただいていただけに、連盟も関係者の皆さんも、確認や再計算をするという考えが無かったのだと思います。今後は、新ルール上での採点システムの運営については、連盟の方にも確認をいただければと考えています」(澤田さん)

 ちなみに今回、海外のデータサイトの運営者が集計ミスについての指摘をSNSに投稿したことで、ファンの間で動揺と懸念が広がった経緯がある。ただ、澤田氏によれば、投稿があった11月1日の早暁の時点で、システムの修正を含めたコムネット側の対応はほぼ完了していたという。11月3日夕刻、連盟から事態が公表されると同時に、コムネットからも詳細な経緯説明とお詫びの文面がサイトにアップされた。

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