三浦璃来(20)、木原龍一(30)組 ペア1位の合計212.02点。SPは73.39点、フリーは138.63点とともに1位で、日本ペアとして初めてGPシリーズで優勝した

 メダリスト会見で木原は語っていた。

「まだ自分たちがトップにいるという感覚はない。やっぱり常に気持ち的には追う側なので。歴代のメダリストの方に、まだまだ自分たちは追いつけていないと思うので、その人たちに追いつきたいです」

 ペアは、ウクライナ侵攻で出場を認められていないロシア、今季はGPシリーズにエントリーしていない中国が強い。それは2人も分かっている。

 今は自分たちの強みを磨きつつ、世界トップで競える土台作りが重要だ。特に三浦はケガ明けなだけに、目の前の試合よりも長期的な視点で無理せず練習していくことが必要だろう。 

■渡辺倫果は大逆転V

 女子は日本の新星が優勝をもぎ取った。

 20歳の渡辺倫果だ。SP6位からの大逆転。18年の紀平梨花(20)以来、日本勢2人目となるGPシリーズデビュー戦での優勝だった。

 逆転を果たした渡辺の武器はトリプルアクセル(3回転半)。フリーの冒頭で鮮やかに決めた。

 試合後、「いまだに信じられないし、実感がわかない」とした上で、

「他の人に感動や刺激を贈れるような演技をしたい」

 とにこやかに話した。

 ジュニア時代はケガに苦しんだ。中学3年の時、カナダ・バンクーバーに拠点を移した。20年にコロナ禍で帰国。今は千葉・船橋のMFアカデミーを拠点に。中庭健介ヘッドコーチらの指導で飛躍を遂げた。

渡辺倫果(20) 女子1位の合計197.59点。SPは6位の63.27点だったが、フリーは1位の134.32点で、GPシリーズデビュー戦での優勝を果たした

 遠回りしてきたように見えるが、渡辺は言う。

 「全てが必要だったと思う。どのピースが欠けても私はここにいないです」

 渡辺の次戦は、NHK杯(11月18~20日、札幌)。

「奇跡的なことが最近起きているなあ、という思いがある。その良い方向に向かっているのを怖がらずに、どんどん突き進んでいきたい」

 NHK杯ではフリーに2度の3回転半を組み込む意向を公言。この気持ちの強さが、渡辺の最大の武器かもしれない。(朝日新聞スポーツ部・坂上武司)

AERA 2022年11月14日号

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