滋賀県高島市にある「メタセコイア並木」
醍醐寺・弁天堂付近

東京都内の紅葉スポット

 実は、東京都内には多くの紅葉狩りスポットがある。今年もライトアップを中止したところは多いが、探せば遠くにでかけずとも紅葉を楽しむことができる。例えば、文京区の六義園や小石川後楽園、中央区・浜離宮恩賜庭園、世田谷区・等々力渓谷、豊島区・目白庭園、葛飾区・水元公園等々。明治神宮の外苑に広がるいちょう並木や世田谷の九品仏・浄真寺の境内も美しい。

 なお、「もみじ饅頭」で知られる安芸の宮島の紅葉はもちろん有名でライトアップもされているが、今年の催事は終了してしまった。九州・中・四国の紅葉の終わりは意外と早い。

京から流れた紅葉が鬼女になるまで

 このように愛でられる紅葉であるが、「鬼女(きじょ)紅葉」という伝説が信州に伝わっている。

 これは創作が先か、言い伝えが先かは定かではないが、話は平安時代へ遡る。源経基の寵愛を受けた紅葉が京の都から流されてくるが、京を偲んで東京や西京、二条、三条と言った名を土地につけ、京での生活を地元に伝えて暮らしていた。やがて力をつけた紅葉は、山賊たちを仲間に引き入れ、力づくで京に戻ろうと企てるも、これを知った朝廷が平維茂に討伐を命じた、という話である。いつしか人をいいなりに動かす紅葉を人々は「鬼女」と呼び、退治されたためだろう、この伝説の残る土地の名は「鬼無里(きなさ)」となったとか。伝説の場所は他にも戸隠山や別所温泉など、信州に広がっていて、各地で「鬼女紅葉まつり」が行われている。紅葉が一方で恐ろしいものに変化した一例であり、もしかしたら源平合戦話のひとつなのかもしれない。

生きた化石「メタセコイア」の黄葉

 黄葉の代表格である銀杏は、街路樹として植えられている本数が国内で最多らしい。理由は手間がかからず排気ガスなどに強く、長寿であるからだが、一方で落ちて腐敗した実を踏んでしまうのが、私は何より恐ろしい(最近は雄木が中心になっているらしいが)。そんな中、近年黄葉の木として有名となっているのが「メタセコイアの並木」である。和名を曙杉といい、1946年までは化石として発見されるだけの絶滅した植物と考えられていた。これが中国四川省で生きた植物として発見されたのである。

 この後、日本各地で植林され、現在、滋賀県高島市では人気の紅葉狩りスポットとなっている。古い風習である紅葉狩りの看板として、生きた化石がこの先定着していくのか、ひとつ楽しみが増えたようである。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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