美空ひばり
美空ひばり

 しかも、その「代弁」できる対象は極めて多岐にわたる。ひばりは「川の流れのように」について、

「この曲はすごくいいと思ってるの。でも私が死ぬときに流れる曲のような気がするの」

 と語ったが、その予感は発売から半年後に的中。おかげで国民的大ヒット曲となった。秋元は独特の感覚で、もう長くはないかもしれないと自分でも思っていたひばりに人生を振り返らせ、その気持ちを代弁したのである。それは見事に「女王の口から聞きたいコトバ」として、歌に昇華した。

 この稀有な才能が、Jポップ時代にも職業作詞家でいられる理由だし、40年間も第一線で活躍し続けるという歌謡史の奇跡をもたらしたのだ。

 ただ、この才能を自身がプロデュースするアイドルグループだけに使うのはもったいない。また、ドラマを手がけたりするのもいいが、できればそろそろ、AKBや坂道以外で渋いヒット曲を生み出してほしいものだ。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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