タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 国内の感染状況が落ち着いたと思ったらオミクロン株が登場して、また感染に怯える巣篭もり生活に戻ってしまうのかと、やりきれない気持ちの人も多いでしょう。私もこの年末には約2年ぶりにオーストラリアの家族と会えるかもしれないと期待していましたが、昨年に続き東京で一人の年越しが決定しました。覚悟はしていたものの、いざそうと決まるとさすがに落ち込むもの。一体いつになったら家族と会えるのだろうと、ビルの明かりが涙で滲(にじ)みました。息子たちと夫とは「残念だけど、きっとまた会えるから一緒に頑張ろう」と励まし合いました。なんだかそれにも慣れてきて、お互いに強くなったなと思います。

 家族とはこの2年近く、ビデオ通話でつながってきました。幸い時差が1時間しかないので、毎日顔を見ておはようもおやすみも言えるし、一緒に夜ご飯も食べられます。時には私が寂しさのあまり泣いてしまうこともあるけど、それも含めて私たちの日常。ハグできなくても、息子たちや夫の日々の変化を毎日の会話や画面越しの表情の中から感じてきました。次男の身長がどんどん伸びていくのも見ることができました。会いたいねえと言い合うたびに「5年後に今のことを“あの時は大変だったよね、みんなでよく頑張ったよね”って笑って思い出そうね。きっと一生の思い出になるよね」と話しています。約8年前にまだ小学生だった息子たちを連れてオーストラリアに引っ越し、私がひとり日本で働く生活を始めた時からずっと、私たち4人は一緒に冒険をしています。当時、もしパンデミックが起きたら会えなくなるかもとちらっと考えたことがこうして現実になるとは思いませんでしたが、非日常が日常になると人は強くなれることもわかりました。不安な師走、どうかいろんな家族が温かい気持ちで過ごせますように。

オミクロン株が世界に広がりつつある。不安は尽きないが、この冬、温かい気持ちで家族が過ごせますように(写真:gettyimages)
オミクロン株が世界に広がりつつある。不安は尽きないが、この冬、温かい気持ちで家族が過ごせますように(写真:gettyimages)

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年12月13日号