
■消えた撮影地点
最初の撮影以降、数年間は4カ月ごとに石巻を訪れた。
「このころは、がれきを片づけたり、家屋を撤去したりして、変化が大きかったんです。なので、4カ月の頻度で通いました」
一方、最初に写した写真を選び、撮影地点を絞っていった。
「どの場所を定点撮影していくか、写真を整理して、300カ所くらいに絞りました。選んだ場所は、被害の大きかったところと、変化が大きくなると思われるところ。あと、街の全体像が分かるように選んでいます。地図上に撮影地点をプロットして、偏りがないか、チェックしました。撮影よりも、写真を整理するのに時間がかかりましたね」
最近は毎年1回、石巻を訪れる。撮影地点は100カ所ほどに減った。
「例えば、そこにものすごく大きな建物が建ってしまうと、もう壁しか写らないので、その場所は外すしかない。周囲の風景ががらりと変わり、目標物がまったくなくなってしまい、撮れなくなったところもあります」

かつて造船所があった旧北上川の中州地区には西内海橋が架かり、市街地と結ばれていた。11年に橋の上から撮影した写真には津波で折れ曲がった欄干やがれきが写っている。しかし、今年写した写真を見ると、撮影場所の西内海橋が撤去され、消えている。
「釣り船をチャーターして、ここまで行ってください、と頼んで、撮影したんです。それくらいやらないと、説得力が出ない」
別の写真では、漁船が乗り上げていた護岸が大きな堤防に変わり、その奥には復興公営住宅が建っている。
「この変化を予測して撮るのが大変なんですよ。たぶん、大きな堤防ができるだろうから、この辺は撮っておいたほうがいいかな、と思って、10年前にシャッターを切った。まあ、予測が外れた写真のほうが多いですけど(笑)」
(アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】齋藤大輔写真展「石巻市定点撮影 2011-2021」
ニコンプラザ東京 ニコンサロン 12月21日~2022年1月10日
写真展に合わせて同名の写真集も発売する。発行・グラフィカ編集室、取り扱い・オフィス・ディゾルブ、B5、176ページ、写真111点、ダブルトーン印刷、2000円(税別)、ISBN978-4-903141-19-0。斎藤さんのWEBサイトで購入できる。