50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、2019年の小脳梗塞に続き、今度はうっ血性心不全の大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超えたいま、天龍さんが伝えたいことは? 今回は「2021年を振り返る」をテーマに、つれづれに明るく飄々と語ってもらいました。
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2021年で一番大きなことは、女子プロレスラーの風間ルミが亡くなったことだなぁ。2021年の振り返りと聞いて、しばらくはそれしか思いつかないくらいだったよ……。彼女とは俺がWARを旗揚げしたときからの縁でね。WARを立ち上げたはいいが、目玉カードもなく、いい選手もいなくて、新日本プロレスや全日本プロレスにお客さんを食われてジリ貧なとき、LLPWの彼女に女子選手を入れてにぎやかにしたいと相談したら、快く協力してくれたんだ。それからWARや天龍プロジェクトでは女子選手も出るようになり、男子とも試合をやるっていう興行形態を確立できた。
彼女はLLPWで、日本のプロレス団体で初めて女社長になってね、ビジネスはビジネスで割り切るけど、甘えるところは甘えて、女性としてのかわいらしさも常に持っている人。神取忍が参議院議員になったときは公設秘書をやったりもしたよね。性格がよくて気持ちいい人で、楽ちゃん(現・三遊亭円楽)とパチンコ店経営してる岡ちゃんと俺のいつも飲み歩いているグループのみんなも風間社長のことが好きだったなぁ。人に媚びるわけじゃなく、自分の物差しでしっかりバランスを取って人に接するから、結果的に人付き合いがよくなる。経営者としても優秀だったと思うし、選手としてうちの団体に出るときは、あの150センチちょっとしかない小さなからだで、一生懸命練習してたね。
あんな小さいからだでキックボクシングもやっていたりと、生命力、生活力のある人で、なんでも自力で生き抜く人だと思っていたから、亡くなったと聞いたときはショックというか、びっくりした。三沢(光晴)のときもそうだったけど、死ぬなんて思っていない人が亡くなると、余計にショックだね。ここ7~8年は会ってなかったけど、てっきり今でもそのへんの社長を手玉に取っているんだろうなって思っていたからね……。本当に残念だよ……。