今の若い選手は小利口というか、枠をはみ出さないで、バカをやらない、小さくまとまっている気がするんだよ。相撲もそうだしね。なんだろう、夢が見られない社会になったのか、夢見させないように抑えつけているのかわかんないけど、小さくまとまっちゃって。プロレスが好きで、この職業を選んで、こんなに痛い思いをしているんだから、もっとハジけて突き抜けてくれよ! そうじゃなきゃ自分がかわいいそうだろう。天龍プロジェクトのリングでハジけて、メジャー団体からピックアップされるようになってくれ!
俺は、レスラーは一気にトップを狙って、ドーンっとステージを上げられるだけ上げたほうが絶対にいいと思う。いきなり上に上げられて、そこで苦労して、工夫した方が、下で地道にやっていくよりもよっぽど身になる。下で地道にやっていると、嫌なことや駆け引きを覚えて、こすられて、小さくまとまって、なんとなくなレスラーになってしまう。パっとトップに行った人は、そういう人にしかない華やかさがあって、怖いもの知らずで、お客さんにとってもそれが魅力になるんだ。地道にやってきた人は、そこがなにか違う。
ビシっといい服を着ているんだけど野暮ったい靴をはいているような、こすられたものを背負っているのが見えるんだよね。「自分はまだそのポジションじゃない」って思っても、地位が上がったらそこでも意外にこなせるもんなんだよ。苦労して地位が上がるんじゃなくて、地位が上がってから苦労するんだ。それに、高みから世間を見たら、気持ちがいいもんだよ。
天龍プロジェクトはこのまま転がしていって、出ている選手が新日本や全日本、NOAHなんかのメジャー団体にピックアップされて、そこのチャンピオンと戦える選手に育ってくれれば、こんなに嬉しいことはないし、やっている甲斐があるってもんだ。今はそんな選手の成長を見ていたいという親心もあり、目標であり、楽しみだ。レイパロマが新日本のリングで尻を出したりしたら最高じゃないか(笑)。新日本にその度量があればだけどな!
レスラーは40歳になる前にハネないと大成しないと思っているから、今出ている若手の今後も見守りたいところだが、彼らが40歳になるまで俺は見届けられるか!? 2022年も引き続き、毎月大会を開催する予定だが、ダメだと思ったらすぐ止めるよ。明日には大会も止めて、レイ・パロマにも飽きているかもれない。天龍プロジェクトは三菱鉛筆と一緒、削るのは簡単だからな! では、みなさん、よいお年を! 来年もよろしく!
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。