その一方で刺激を受けることも多かったね。例えば、武藤敬司の活躍もずいぶん刺激になっている。俺が50歳近い年で武藤が持っているIWGPのベルトに挑戦したとき、あいつは「なんでこんなジジイとやらなきゃいけないんだ」って文句言っていたけど、今じゃあ、当時の俺の年齢をとっくに追い越しているだろう。吐いたツバは自分に戻ってくるんだぞ、わかったか!(笑)
改めて、2021年は、病気とか入院とか、いろいろあったけど、71歳にしたらこんなもんだろう。順調だったと思うよ。それよりも、振り返るとここ数年でいろいろなことをした1年だったね。天龍プロジェクトで毎月大会を開催しているから、その大会に向けて動かされて、毎日忙しくしていて、終わったらほっこりする。メリハリがあって、気持ちの中で躍動感も出てきたと思う。選手に触発されて、会場内を歩き回ったり、運動したりしてね。選手にただのジジイだと思われたくなくて、動いちゃうんだ(笑)。
2020年はコロナで外出もままならなかったが、そのせいでプロレスの試合がなかなかできないレスラーに活躍の場をあげたいと思って天龍プロジェクトを再始動させたんだから、なにがどう転ぶかわからないもんだ。やり始めたからには、コケて笑われたくないという気持ちもあるし、なにより続けることによってレスラーに恩返しができることが大きい。生きているうちに恩返しだ。ほら、引退したプロレスラーだって、今の現役レスラーに対して、なにもしていないやつ、いっぱいいるだろう(笑)。
まあ、いらん金もかかるし、自分自身や家族の食い扶持(ぶち)だけ稼げればいいっていうんだったら、俺もやらないけど、そうじゃないっていう決断だ。代表(※娘の紋奈さん)はいつも旦那に「ビジネス的にはバカだ」って言われているよ。本当、儲からないんだもの(笑)。それでもやるのは「情けは人のためならず、巡り巡って己がため」ということわざがどんなもんか実証してやろうと思っているからだ。俺の人生もあと何年か、死ぬ間際になって「あれは嘘だったのか!」とならないといいが……。