撮影・小暮誠
撮影・小暮誠
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 山本學さん、85歳。「白い巨塔」などテレビドラマの名作ほか映画、舞台を通じ演劇史に名を刻む俳優である。近作「峠 最後のサムライ」(原作・司馬遼太郎)でも存在感ある農民役を渋く演じた。その學さんがいま認知症早期治療に励んでいる。『ボケてたまるか!』の著者の山本朋史・元本誌編集委員(70)が報告する。

【実例】「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い

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 山本學さん(筆者も山本で紛らわしいので以下、學さん)が東京・お茶の水にあるメモリークリニックで初めて朝田隆医師の診断を受けたのは今年4月下旬のことだ。

「記憶力が低下していることは以前から意識していました。特に80歳を過ぎて固有名詞が出なくなった。人の名前だけでなく物の名前も。それだけだったら加齢が原因と軽く考えていたのですが、今年になってから幻視が始まった。ないものが見える。床に毛布が転がっている、足でどけようとしたら空を蹴っただけ。ハートやスペードの印のついたプラスチックの箱が壁にかかっている、でも実際にはそんなものはなかった」

 學さんは白内障を手術、緑内障の治療もしていたが、視力に問題はなかったはず。寝ぼけているのかと瞼(まぶた)をこすったという。しかし、1週間に2、3回の頻度で幻視は現れ続けた。本などを読んで得た知識から「これはレビー小体型認知症の症状では」と疑った。心配は募り、すぐに朝田医師のもとに駆け込んだという。

 學さんと筆者をつないだのは朝田医師である。

「山本學さんが認知症早期治療の体験記を書いた山本朋史さんに会って話を聞きたい、と。連絡をとってもらえませんか」

 ゴールデンウィーク明けにメモリークリニックの近くのホテルでお会いした。筆者は朝田医師から8年半前にMCI(軽度認知障害)との診断を受けている。早期治療の効果か、リバーター(健常者に戻った人)とお墨付きをもらったが、今も週に1回デイケアに通いボケ再発阻止を念じて不断のトレーニングを自分に課す身である。あの學さんが困っているのか。力になることができるだろうか。

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